遠くのものは避けよ
自分に情報が届かないものには手を出すな。確かめられないものを買わない、という戒め。
ひとことで言うと
自分が中身を確かめられないものには手を出すな、という戒めです。
もう少しくわしく
古くから伝わる相場格言の1つです。出典ははっきりしません。
「遠く」は距離のことではなく、情報が届きにくいことを指します。
| 何が遠いか | 例 |
|---|---|
| 情報が遠い | 何をしている会社か説明できない |
| 場所が遠い | 言葉の壁があり、開示を直接読めない |
| 仕組みが遠い | 値動きの決まり方が分からない商品 |
つまりこの格言は、こう言い換えられます。
説明できないものを買うな。
実際の数字で見る
手元にどれだけ情報が届くかを、種類ごとに並べます。
| 買うもの | 手に入る情報 |
|---|---|
| 日本の上場企業 | 有価証券報告書・決算短信・適時開示。すべて日本語で無料 |
| 海外の大企業 | 開示はある。多くは外国語 |
| 仕組みの複雑な商品 | 目論見書はあるが、値動きの決まり方が読み取りにくい |
| SNSで勧められた銘柄 | 勧めた人の話だけ |
上から下へ行くほど、確かめられることが減ります。
そして、確かめられないぶんを埋めるのは、他人の話です。
具体例で見ます。ある人が2つの銘柄を持っているとします。
| A社 | B社 | |
|---|---|---|
| 知った経緯 | 自分が使っている商品の会社 | SNSで話題になっていた |
| 何をしている会社か | 説明できる | 説明できない |
| 直近の売上高 | 調べた | 見ていない |
| 買った理由 | 中身に対して安いと判断した | 上がっていたから |
下げたときの行動が、この差から決まります。
| 状況 | A社を持つ人 | B社を持つ人 |
|---|---|---|
| 20%下げた | 決算を見て、崩れていなければ持つ | 判断の材料がない |
| 材料が出た | 自分で読んで評価できる | 書いてある解説を探す |
| さらに下げた | 決めた線で売る | 不安で投げるか、根拠なく持つ |
遠いものを持つと、下げたときに自分で判断できません。
判断できなければ、他人の言葉に従うしかなくなります。 そして他人は、あなたの資金に責任を持ちません。
ここに注意
「知っている会社だから安心」という逆の誤りもあります。
この格言を裏返して、「身近な会社なら買ってよい」と読むと危険です。
毎日使っている商品の会社でも、財務が傷んでいれば株価は下がります。
| 知っていること | 投資の判断に足りるか |
|---|---|
| 商品を使っている | 足りない |
| 店がいつも混んでいる | 足りない |
| 売上と利益が伸びている | 材料になる |
| 自己資本比率が保たれている | 材料になる |
「遠くを避けよ」は、近いものを無条件に買えとは言っていません。確かめられる位置にいろと言っているだけです。
確かめる作業は、別に必要です。
もう3つ、注意点があります。
1. 「遠い」を理由に、分散を捨てないでください。
日本の会社しか分からないからといって、1社や2社に集中してよいということにはなりません。
自分で確かめられないものを避けたいが、分散もしたい。その両立のために投資信託やETFがあります。
| やり方 | 中身 |
|---|---|
| 個別株 | 自分で確かめる。数を絞らざるをえない |
| インデックスの投資信託・ETF | 中身を1社ずつ確かめないかわりに、広く薄く持つ |
インデックスの商品は、「どの会社が良いか分からない」ことを前提にした仕組みです。遠いものを避けたい人に合っています。
ただし、信託報酬と中身(どの指数に連動するか)は確かめてください。ここは近い情報です。
2. レバレッジのかかった商品は、近くても遠いままです。
レバレッジ型のETFは、日本の証券会社で日本語で買えます。距離は近いのです。
しかし値動きの決まり方が近くありません。日々の変動率を何倍かする仕組みのため、横ばいの相場で元本が減っていきます。
この性質を説明できないなら、それは遠いものです。
3. 「詳しい人が勧めていた」は、近さになりません。
勧めた人がどれだけ詳しくても、確かめるのはあなたです。
その人が売ったことも、損をしたことも、あなたには伝わりません。情報が片方向にしか流れていないものは、遠いものです。
そのうえで、実用的な線引きを書いておきます。
買う前に、その会社が何で儲けているかを3文で説明できるか試してください。
説明できなければ、まだ買う段階ではありません。
説明に必要なものは、すべて決算短信の最初の数ページにあります。
| 確かめること | 見る場所 |
|---|---|
| 何を売っているか | セグメント情報 |
| いくら儲かっているか | 損益計算書 |
| どこで儲かっているか | セグメント別の利益 |
| 倒れにくいか | 自己資本比率 |
この4つを見るのに、30分もかかりません。 30分かけない会社は、遠いままです。
関連する言葉
- 知ったらしまい 自分がその話を知ったときには、すでに株価に入っている。情報が届く順番の話。
- スクリーニング(銘柄の絞り込み) 条件を決めて銘柄を絞る作業。条件を増やすほど「過去に良かった株」に寄っていく。
- 閑散に売りなし 売買が細って値動きが乏しいときは、売り込んでも下がりにくいという古い格言。
- 分散投資 複数の銘柄に分けて投資すること。1社の失敗で資産の大半を失う事態を防ぐ。
- 投資信託 多くの人から集めた資金をまとめて運用する商品。少額で分散できるが、持っている間ずっと費用がかかる。
- 最終更新
- 2026-09-18