純資産と自己資本の違い
似た言葉だが中身が違う。ROEや自己資本比率に使うのは自己資本のほう。
ひとことで言うと
純資産のうち、その会社の株主のものだけを取り出したのが自己資本です。
もう少しくわしく
決算書を見ると、純資産と自己資本という似た言葉が出てきます。
この2つは違うものです。 そして、指標の計算に使うのは自己資本のほうです。
純資産は、次のもので構成されています。
| 中身 | 何か | 自己資本か |
|---|---|---|
| 株主資本 | 資本金・利益の積み上げなど | 入る |
| その他の包括利益累計額 | 保有株の含み損益など | 入る |
| 新株予約権 | まだ株になっていない権利 | 入らない |
| 非支配株主持分 | 子会社のうち、他人の持ち分 | 入らない |
つまり、こうです。
自己資本 = 純資産 − 新株予約権 − 非支配株主持分
いちばん大事なのは、非支配株主持分です。
実際の数字で見る
なぜ非支配株主持分を除くのか。子会社の連結を見れば分かります。
A社が、B社の株を70%持っているとします。この場合、B社の資産も負債もすべてA社の決算書に合算されます。100%ではなく70%でもです。
しかしB社の30%は、別の株主のものです。
| 金額 | |
|---|---|
| B社の純資産 | 500億円 |
| うちA社のもの(70%) | 350億円 |
| うち他の株主のもの(30%) | 150億円 |
この150億円が非支配株主持分です。連結の決算書には載りますが、A社の株主のものではありません。
ここで、図の数字を使って指標を計算します。
| 純資産を使うと | 自己資本を使うと | |
|---|---|---|
| 分母 | 1,500億円 | 1,350億円 |
| 当期純利益 135億円でのROE | 9.0% | 10.0% |
1ポイント違います。 子会社の多い会社ほど、この差は開きます。
同じことが、次の指標すべてに起きます。
| 指標 | 使うもの |
|---|---|
| ROE | 自己資本(正確には親会社株主に帰属する部分) |
| 自己資本比率 | 自己資本 |
| BPS・PBR | 自己資本 |
ここに注意
利益の側にも、同じ区別があります。ここを合わせないと計算が狂います。
連結の損益計算書には、似た2つの利益が並びます。
| 名前 | 中身 |
|---|---|
| 当期純利益 | 子会社の分も全部含む |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 他の株主の取り分を除いた後 |
ROEを計算するときは、親会社株主に帰属する当期純利益 ÷ 自己資本です。
上を全体、下を一部にすると、ROEが実際より高く出ます。 決算短信の数字を自分で計算するときは、どちらの利益を使っているか確かめてください。
もう1つ、知っておくと役に立つことがあります。
非支配株主持分が大きい会社は、見た目より手取りが少ないことがあります。
子会社が大きく稼いでも、その会社の持ち分が60%なら、40%は他の株主のものです。連結の売上高や営業利益は全額が載るのに、最終的な取り分は減ります。
売上高や営業利益が伸びているのに、1株あたり利益(EPS)が伸びていない会社を見つけたら、ここを疑ってください。有価証券報告書で非支配株主持分の推移を確かめられます。
最後に、実務的な話です。
証券会社のサイトが表示するROEやPBRは、たいてい自己資本で計算されています。 自分で計算し直す必要はありません。
ただし、決算書を自分で読むときには、この区別が必要になります。貸借対照表の純資産の部には、必ず内訳が書かれています。合計だけを見ないでください。
関連する言葉
- 自己資本比率 会社の財産のうち、借金でない部分がどれだけあるかを示す割合。高いほど倒れにくい。
- ROE(自己資本利益率) 株主から預かったお金を使って、1年でどれだけ利益を出せたかを示す割合。
- BPS(1株あたり純資産) 会社を今たたんだとき、株1つに割り当てられる財産の額。PBRを計算するもとになる。
- PBR(株価純資産倍率) 会社が持っている正味の財産に対して、株価が何倍かを示す数字。1倍割れは割安とされる。
- 連結決算 親会社と子会社をまとめた決算。投資判断に使うのは原則こちら。
- 最終更新
- 2026-09-17