包括利益
当期純利益に、まだ確定していない損益を足したもの。純資産の増減と一致する。
ひとことで言うと
当期純利益に、「まだ売っていないものの含み損益」などを足した利益です。
もう少しくわしく
会社の1年の成果を表す数字は、1つではありません。
| 名前 | 中身 |
|---|---|
| 当期純利益 | 売買が終わって確定した損益 |
| 包括利益 | 当期純利益 + まだ確定していない損益 |
足される部分をその他の包括利益といいます。略してOCIとも呼ばれます。
何が入るのか。代表的なものは3つです。
| 項目 | 中身 |
|---|---|
| その他有価証券評価差額金 | 持っている他社株の含み損益 |
| 為替換算調整勘定 | 海外子会社の資産を円に直したときの差 |
| 退職給付に係る調整額 | 年金資産の運用成績など |
いずれもまだ売っていない、まだ確定していないものです。
なぜこれを別に出すのか。純資産の増減と合わせるためです。
包括利益 = その期の純資産の増減(株主との取引を除く)
当期純利益だけでは、純資産の増減と一致しません。含み損益の分がずれます。 包括利益はそのずれを埋めます。
実際の数字で見る
政策保有株をたくさん持っている会社の例です。
| 金額 | |
|---|---|
| 当期純利益 | 100億円 |
| 持っている他社株の含み益の増加 | +80億円 |
| 海外子会社の為替換算の差 | −30億円 |
| 包括利益 | 150億円 |
当期純利益は100億円ですが、包括利益は150億円です。
翌年、相場が下げたとします。
| 金額 | |
|---|---|
| 当期純利益 | 100億円 |
| 持っている他社株の含み益の減少 | −120億円 |
| 為替換算の差 | +10億円 |
| 包括利益 | −10億円 |
本業は同じ100億円の黒字なのに、包括利益はマイナスになりました。
これは「会社が損をした」わけではありません。持っている株の値段が下がっただけです。売っていないので、現金は1円も動いていません。
しかし純資産は確かに減っています。 自己資本比率も下がります。
ここに注意
投資判断の中心に使うのは、当期純利益のほうです。
理由は3つあります。
| 指標 | 使う利益 |
|---|---|
| EPS | 当期純利益 |
| ROE | 当期純利益 |
| PER | 当期純利益(EPS経由) |
包括利益を使う指標は、一般には使われていません。
2. 本業の成果が見えにくくなります。
包括利益には、相場の変動が丸ごと入ります。会社が何もしなくても、株式相場や為替が動けば変わります。
その会社が事業でどれだけ稼いだかを知りたいなら、当期純利益、さらには営業利益を見るほうが適切です。
3. 会計基準によって扱いが違います。
IFRSでは、包括利益がより重視されます。日本基準とは表示の仕方も違います。基準をまたいで比べるときは注意してください。
では、包括利益は何のために見るのか。2つあります。
1. 隠れたリスクの大きさが分かります。
当期純利益と包括利益の差が毎年大きい会社は、本業以外の変動を抱えています。
| 差の大きさ | 意味 |
|---|---|
| ほとんどない | 本業だけで完結している |
| 毎年大きく振れる | 株や為替の影響を強く受ける |
政策保有株を多く持つ会社、海外売上の比率が高い会社は、差が大きくなります。
これは業績の安定性を測る材料になります。
2. 純資産の動きが説明できます。
「利益は出ているのに、なぜ純資産が減ったのか」という疑問は、包括利益を見れば解けます。含み損が出ていたということです。
そして、実務的に重要な点があります。
その他の包括利益は、いつか当期純利益に移ることがあります。
持っている株を実際に売れば、それまで含み益だった分が売却益として当期純利益に出てきます。これをリサイクリングといいます。
つまり、その他の包括利益は「将来の当期純利益の予備軍」でもあります。
大きな含み益を抱えている会社は、売れば利益を出せます。 ただしそれは一度きりで、本業の実力ではありません。
政策保有株の売却益が特別利益として計上される話と、ここでつながります。
関連する言葉
- 当期純利益 税金も引いた後、最終的に会社に残る利益。配当やEPSのもとになる。
- 純資産と自己資本の違い 似た言葉だが中身が違う。ROEや自己資本比率に使うのは自己資本のほう。
- 会計基準の違い(日本基準・IFRS・米国基準) 基準が違うと営業利益の中身も変わる。基準をまたいで数字を比べてはいけない。
- 政策保有株 取引関係の維持のために持つ他社の株。近年は縮減が求められている。
- 円安・円高と業績 為替が動くだけで、海外売上の円換算額が変わる。数量が同じでも売上高は増減する。
- 最終更新
- 2026-09-17