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株を学ぶ / 基礎指標

のれん償却

買収の上乗せ分を毎年少しずつ費用にすること。会計基準を変えるだけで利益が増える。

ひとことで言うと

買収のときに上乗せして払った分を、毎年少しずつ費用として引いていくことです。

もう少しくわしく

のれんは、会社を買うときに相手の純資産を超えて払った上乗せ分です。

たとえば純資産100億円の会社を300億円で買えば、のれんは200億円です。

この200億円をどう扱うかで、会計基準によって正反対の処理をします。

会計基準 のれんの扱い
日本基準 20年以内で毎年少しずつ費用にする
IFRS(国際基準) 費用にしない。価値が落ちたときだけ減損する
米国基準 IFRSと同じく、原則として償却しない

日本基準でこの「毎年少しずつ費用にする」ことをのれん償却といいます。

償却費は販売費及び一般管理費に入るため、営業利益が減ります。

実際の数字で見る

同じ会社を、2つの基準で並べます。

金額
売上高 1,000億円
のれん 200億円
償却期間 10年
1年あたりの償却費 20億円

損益計算書を比べます。

日本基準 IFRS
売上高 1,000億円 1,000億円
販管費(のれん償却を除く) 900億円 900億円
のれん償却費 20億円 0円
営業利益 80億円 100億円
営業利益率 8.0% 10.0%

同じ会社です。売っているものも、働いている人も、受け取る現金も同じです。

それでも営業利益は80億円と100億円、利益率は8%と10%になります。

会計基準を変えるだけで、利益が25%増えて見えます。

実際、日本基準からIFRSに移行した年に「営業利益が大きく増えた」という会社があります。その中身がのれん償却がなくなっただけということは、珍しくありません。

ここに注意

利益が増えた理由が、事業なのか会計なのかを確かめてください。

見分け方は単純です。決算短信や有価証券報告書で、会計基準が変わっていないかを見ます。

見る場所 何が分かるか
決算短信の表紙 日本基準かIFRSか
有価証券報告書の注記 のれんの残高と償却期間
販管費の内訳 のれん償却費がいくらか

もう4つ、知っておいてください。

1. 償却しないほうが安全、ではありません。

IFRSは償却しないぶん、買収が失敗したときに一度に大きく落ちます。

失敗が表に出るとき
日本基準 毎年少しずつ、加えて減損
IFRS 減損のときに一気に

IFRSの会社が、ある年に数百億円の減損を出して赤字になる、ということが起きます。毎年少しずつ削っていないぶん、残高が大きいままだからです。

どちらが良いという話ではありません。 痛みが分散するか、まとめて来るかの違いです。

2. EBITDAではのれん償却が消えます。

EBITDAは、減価償却費などを足し戻した数字です。のれん償却も足し戻されます。

そのためEBITDAで比べれば、日本基準とIFRSの差はほぼ消えます。 海外の会社と比べるときにEBITDAが使われるのは、この事情もあります。

ただしEBITDAは、買収に払ったお金が本当に回収できたのかを見ない数字でもあります。のれん償却を消すということは、買収の失敗を見えなくすることでもあります。

3. 償却期間は会社が決めます。

日本基準では20年以内で償却しますが、5年にするか20年にするかは会社が決めます。

償却期間 200億円の年間償却費
5年 40億円
10年 20億円
20年 10億円

期間を長くすれば、毎年の利益は多く見えます。 同業他社と利益率を比べるときは、償却期間も確かめてください。

4. 税金の計算とは別です。

会計上の のれん償却費と、税金の計算での扱いは同じではありません。 税引後の利益への影響は単純ではないため、具体的な数字は有価証券報告書の税効果会計の注記で確かめてください。

そのうえで、投資家として見るべき点を書いておきます。

のれんが自己資本に対して大きすぎないかを見てください。

のれんは、売れない資産です。土地や機械と違い、単体では換金できません。

自己資本 500億円、のれん 400億円という会社なら、のれんを全額減損した瞬間に自己資本は100億円になります。自己資本比率が一気に落ちます。

見る割合 目安
のれん ÷ 自己資本 大きいほど、減損の打撃が大きい

この割合は、有価証券報告書の貸借対照表から誰でも計算できます。買収を繰り返している会社ほど、確かめる価値があります。

関連する言葉

  • のれん 買収で相手の純資産を超えて払った上乗せ分。うまくいかないと減損として一気に消える。
  • 減損 資産の価値が下がったとき、その差額を一度に費用として計上する処理。黒字が一気に赤字になる。
  • EBITDA 利息・税金・減価償却を引く前の利益。国や設備の違いを除いて会社を比べるための数字。
  • 営業利益 本業だけで稼いだ利益。会社の実力を最も素直に表す数字。
  • 会計基準の違い(日本基準・IFRS・米国基準) 基準が違うと営業利益の中身も変わる。基準をまたいで数字を比べてはいけない。
最終更新
2026-09-18