自己株式(金庫株)
会社が買い戻して保有している自社の株。EPSやROEの計算から除かれる。
ひとことで言うと
会社が自分で買い戻して持っている、自社の株のことです。
もう少しくわしく
金庫株(きんこかぶ)とも呼ばれます。会社の金庫にしまってある株、という意味です。
自社株買いをすると、買い戻した株は自己株式になります。その後の扱いは2つです。
| 扱い | 何が起きるか |
|---|---|
| 消却 | 株そのものを消す。発行済株式数が減る |
| 保有し続ける | 金庫株として持つ。将来また使える |
保有し続ける場合、後から次の用途に使えます。
- ストックオプション(役員や社員に渡す権利)
- M&A(買収の対価として相手に渡す)
- 市場で売り出す
自己株式には、普通の株と違う性質があります。
| 普通の株主 | 自己株式 | |
|---|---|---|
| 議決権 | ある | ない |
| 配当 | もらえる | もらえない |
| 貸借対照表での扱い | — | 純資産のマイナス項目 |
3つ目が特徴的です。自己株式は資産ではなく、純資産から差し引く形で表示されます。買い戻しに使ったお金の分だけ、会社の正味の財産が減ったという考え方です。
実際の数字で見る
自己株式が指標に与える影響を見ます。
| 買い戻し前 | 買い戻し後 | |
|---|---|---|
| 当期純利益 | 100億円 | 100億円 |
| 発行済株式数 | 1億株 | 1億株 |
| 自己株式 | 0株 | 1,000万株 |
| 計算に使う株数 | 1億株 | 9,000万株 |
| EPS | 100円 | 約111円 |
| 純資産 | 1,000億円 | 880億円(120億円で買い戻し) |
| ROE | 10.0% | 約11.4% |
利益はまったく変わっていないのに、EPSもROEも上がりました。
理由は単純です。EPSの計算では自己株式を除いた株数を使い、ROEの計算では自己株式を引いた後の純資産を使うためです。
分母が小さくなるので、比率は上がります。
ここに注意
自社株買いでEPSやROEが上がっても、会社が稼ぐ力は何も変わっていません。
ここが最も誤解されやすい点です。
| 変わったか | |
|---|---|
| 売上高 | 変わらない |
| 営業利益 | 変わらない |
| EPS | 上がる |
| ROE | 上がる |
| 手元の現金 | 減る |
上の例では、120億円の現金が会社から出ていきました。その現金は、もう設備投資にも買収にも使えません。
したがって、自社株買いの評価は「何に使う予定だった現金か」で決まります。
| 状況 | 評価 |
|---|---|
| 現金が余っていて、使い道がない | 合理的 |
| 株価が本来の価値より安い | 合理的 |
| 成長のための投資を削って買い戻した | 疑問 |
| ROEの目標を達成するためだけに行った | 疑問 |
4つ目には注意が必要です。ROEは経営者の評価に使われることがあります。分母を減らせば目標は達成できます。 本業を改善せずに数字だけ良くする方法が存在する、ということです。
見分ける方法は、ROEとROAをあわせて見ることです。
- ROEだけが上がり、ROAは横ばい → 分母を減らしただけ
- ROEもROAも上がっている → 本当に稼ぐ力が上がった
もう一点、実務的な注意です。
自己株式を再び市場に売り出すと、増資と同じ効果になります。
金庫株は消えていません。会社がそれを売り出せば、市場に出回る株数が増え、1株あたりの価値は薄まります。 大量の自己株式を持つ会社では、この可能性を頭に入れておいてください。
保有している自己株式の数は、有価証券報告書で確認できます。
関連する言葉
- 自社株買い 会社が自分の会社の株を市場から買い戻すこと。1株あたりの価値が高まる。
- EPS(1株あたり利益) 会社の利益を株の数で割った数字。株1つが1年でいくら稼いだかを表す。
- ROE(自己資本利益率) 株主から預かったお金を使って、1年でどれだけ利益を出せたかを示す割合。
- BPS(1株あたり純資産) 会社を今たたんだとき、株1つに割り当てられる財産の額。PBRを計算するもとになる。
- 最終更新
- 2026-09-16