政策保有株
取引関係の維持のために持つ他社の株。近年は縮減が求められている。
ひとことで言うと
取引先との関係を保つために持っている、他社の株のことです。
もう少しくわしく
持ち合い株とも呼ばれます。
A社がB社の株を持ち、B社もA社の株を持つ。互いに株を持ち合うことで、次を狙います。
- 取引関係を安定させる
- 買収されにくくする(安定株主を確保する)
- 株主総会で味方になってもらう
日本では長く一般的な慣行でした。しかし近年、縮減が強く求められています。
理由は3つです。
| 問題 | 内容 |
|---|---|
| 資本が無駄に使われている | 本業に使えるはずの資金が、他社の株に固定されている |
| 株主総会が機能しない | 互いに賛成し合うため、経営を監視する力が働かない |
| 株価の変動を受ける | 他社の株価が下がれば、自社の財務も悪化する |
コーポレートガバナンス・コードでは、政策保有株について保有の意義を毎年検証し、開示することが求められています。
実際の数字で見る
政策保有株が指標に与える影響を見ます。総資産2,000億円・純資産1,400億円 (つまり負債600億円)・当期純利益100億円の会社が、政策保有株300億円分を 簿価どおりに売ったとします。
まず、売っただけでは何も変わりません。
| 売る前 | 売っただけ | |
|---|---|---|
| 総資産 | 2,000億円 | 2,000億円 |
| 純資産 | 1,400億円 | 1,400億円 |
| ROA | 5.0% | 5.0% |
株が現金に変わっただけなので、総資産は1円も減っていません。 指標も動きません。 ここを勘違いしやすいので、先に書いておきます。
変わるのは、その現金を会社の外に出したときです。使い道で結果が分かれます。
| 売る前 | 借入の返済に使う | 自社株買いに使う | |
|---|---|---|---|
| 総資産 | 2,000億円 | 1,700億円 | 1,700億円 |
| 純資産 | 1,400億円 | 1,400億円 | 1,100億円 |
| 当期純利益 | 100億円 | 100億円 | 100億円 |
| ROA | 5.0% | 5.9% | 5.9% |
| ROE | 7.1% | 7.1% | 9.1% |
本業の稼ぎは100億円のまま変わっていません。 それでも指標は改善します。 使っていない資産が減ったためです。
近年、政策保有株の売却が増えているのは、こうした効果を狙う面があります。 ただし売却の発表を見たら、現金の使い道まで確かめてください。 売っただけで 手元に置いたままなら、上の1つ目の表のとおり、指標は何も変わりません。
ここに注意
政策保有株の売却益は、特別利益として計上されます。本業の利益ではありません。
政策保有株を売れば、取得価格との差額が利益になります。長年持っていた株なら、含み益が大きいことがあります。
| 金額 | |
|---|---|
| 営業利益 | 80億円 |
| 政策保有株の売却益 | +220億円 |
| 当期純利益 | +210億円 |
当期純利益が営業利益の2.6倍になりました。しかしこれは一度きりです。
売った株は、もう二度と売れません。来年も同じ利益を出すには、また別の株を売る必要があります。
確認方法は2つです。
1. 有価証券報告書の「政策保有株式」の項目を見る。
次が開示されています。
- 銘柄数と、貸借対照表に載っている合計額
- 主要な銘柄の名前と保有目的
- 前年からの増減
2. 純資産に対する割合を確認する。
| 政策保有株 ÷ 純資産 | 見方 |
|---|---|
| 5%未満 | 気にしなくてよい |
| 10〜20% | 一般的な範囲 |
| 30%超 | 資本が本業に使われていない |
割合が高い会社は、縮減の余地が大きいとも言えます。売却して自社株買いや設備投資に回せば、指標は改善します。
一方、注意すべき点もあります。
「政策保有株を売った」という発表だけで買うのは早計です。
売却益は一度きりです。その資金を何に使うかが本題です。
- 自社株買いに使う → 株主還元
- 設備投資に使う → 将来の利益
- 借金の返済に使う → 財務の改善
- 何も発表がない → 判断できない
発表の原文を読み、使い道が明示されているかを確認してください。
関連する言葉
- 自己株式(金庫株) 会社が買い戻して保有している自社の株。EPSやROEの計算から除かれる。
- ROE(自己資本利益率) 株主から預かったお金を使って、1年でどれだけ利益を出せたかを示す割合。
- 自己資本比率 会社の財産のうち、借金でない部分がどれだけあるかを示す割合。高いほど倒れにくい。
- 特別損益 一度きりの利益や損失。これを含む当期純利益だけを見ると、実力を見誤る。
- 最終更新
- 2026-09-16