優待クロス
株価の変動を打ち消して株主優待だけを取る手法。費用の計算を誤ると損をする。
ひとことで言うと
買いと売りを同時に行い、値動きの影響を消したまま株主優待だけを受け取る手法です。
もう少しくわしく
株主優待が欲しいだけなのに、株価が下がれば優待以上に損をします。それを避けるための手法が優待クロスです。つなぎ売りとも呼ばれます。
仕組みはこうです。同じ銘柄を、同じ株数、同時に買って売ります。
| 内容 | |
|---|---|
| 現物買い | 100株を普通に買う |
| 信用売り(空売り) | 同じ100株を、借りて売る |
株価が上がれば、買いで得をして売りで同じだけ損をします。下がればその逆です。合計すると、損益はゼロになります。
この状態で権利確定日をまたぐと、現物を持っている扱いで優待の権利が得られます。 権利確定後、両方の建玉を相殺して終了します。
値動きのリスクを消したまま、優待だけを受け取る。 これが狙いです。
「クロス」という名前は、買い注文と売り注文を同時に出して交差させることに由来します。
実際の数字で見る
3,000円相当の食事券をもらうために、どれだけの費用がかかるかを見ます。株価2,000円、100株(20万円分)とします。
| 費用の項目 | 金額 |
|---|---|
| 現物の買付手数料 | 0円(無料の証券会社) |
| 信用売りの手数料 | 0円 |
| 貸株料(株を借りる費用・年1.15%×5日) | 約310円 |
| 信用売りの管理費など | 約100円 |
| 合計の費用 | 約410円 |
| 受け取る優待 | 3,000円相当 |
| 差し引き | +2,590円 |
計算上は利益が出ます。これが成立する場合もあります。
しかし、次の条件が崩れると結果は変わります。
ここに注意
逆日歩(ぎゃくひぶ)という費用が、予測できない額で発生します。
信用売りをするには、株を借りる必要があります。借りたい人が多すぎて株が足りなくなると、追加の費用が発生します。 これが逆日歩です。
優待の権利確定日には、同じことを考える人が集中します。結果として株が足りなくなり、逆日歩が跳ね上がります。
| 想定 | 実際 |
|---|---|
| 費用410円 | 逆日歩8,000円が発生 |
| 優待3,000円 | 優待3,000円 |
| +2,590円の利益 | -5,410円の損失 |
逆日歩の額は、権利確定日の翌営業日にならないと確定しません。 つまり費用がいくらかかるか分からないまま、取引することになります。
過去には、3,000円の優待を取るために数万円の逆日歩を払う結果になった例があります。
これを避ける方法として、逆日歩が発生しない「一般信用」での売りが使われます。ただし在庫に限りがあり、人気銘柄は権利確定日の1か月以上前に売り切れます。
他にも、注意すべき点があります。
1. 配当は受け取れません(実質的に)。
現物で配当を受け取る一方、信用売りの側では配当落調整金を支払います。金額はほぼ同じですが、税金の扱いが違うため、わずかに損をします。
2. 手間に対して、得られる額は小さいです。
1銘柄あたり数千円です。まとまった金額にするには、多数の銘柄で、時期を管理しながら実行する必要があります。
3. 信用取引の口座が必要です。
信用取引には審査があり、仕組みの理解も必要です。制度を誤解したまま行うと、想定外の損失が出ます。
当サイトの立場を書いておきます。優待クロスは、投資ではなく制度を使った作業です。 会社の価値を分析して買う行為とは別のものです。
否定はしませんが、費用の計算を誤ると簡単に赤字になります。 仕組みを完全に理解してから行ってください。
関連する言葉
- 株主優待 会社が株主に贈る、自社製品や割引券などの品物やサービス。日本独自の慣習。
- 権利確定日と権利落ち日 配当や優待をもらえる株主が決まる日と、その翌営業日に株価が下がりやすい現象。
- 空売り(からうり) 持っていない株を借りて先に売り、値下がりしたら買い戻して差額を得る手法。
- 信用取引 証券会社からお金や株を借りて売買する仕組み。手持ち以上の金額を動かせるが、損も拡大する。
- 最終更新
- 2026-09-16