PBR1倍割れ
株価が1株あたり純資産を下回った状態。安いのではなく、評価されていない可能性がある。
ひとことで言うと
株価が、1株あたりの純資産を下回っている状態です。
もう少しくわしく
PBRは、株価が1株あたり純資産(BPS)の何倍かを表します。
PBR = 株価 ÷ BPS
これが1倍ということは、株価とBPSが同じということです。1倍割れは、株価のほうが低い状態です。
どういう意味になるか。
| 金額 | |
|---|---|
| 会社の純資産 | 1,000億円 |
| 株式市場での値段(時価総額) | 700億円 |
| PBR | 0.7倍 |
1,000億円の中身がある会社を、700億円で買えるように見えます。
理屈のうえでは、こうなります。
会社を解散して資産をすべて売り、負債を返して残りを株主に配れば、株価より多く戻ってくる。
このため、PBR1倍は解散価値と呼ばれることがあります。
日本では、この状態の会社が多いことが長く問題とされてきました。2023年には東京証券取引所が、上場企業に対して資本コストや株価を意識した経営を求める要請を出しています。
実際の数字で見る
なぜ1倍を割るのか。 答えはROEと株主資本コストの関係にあります。
株主資本コストを8%として、3社を比べます。
| ROE | 株主資本コストとの差 | PBRの傾向 | |
|---|---|---|---|
| A社 | 12% | +4 | 1倍を超えやすい |
| B社 | 8% | 0 | 1倍前後 |
| C社 | 5% | −3 | 1倍を割りやすい |
C社は赤字ではありません。しかし株主の期待に届いていません。
具体的に考えます。純資産1,000億円のC社が、毎年50億円(ROE5%)を稼ぐとします。
株主が8%を求めているなら、50億円の利益に見合う価値は625億円です。
50億円 ÷ 8% = 625億円
純資産は1,000億円あるのに、稼ぎから逆算した価値は625億円。この差が、PBR0.6倍台という評価になります。
市場は、純資産そのものではなく「その純資産がどれだけ稼ぐか」を見ています。
ここに注意
「PBR1倍割れだから割安」と考えるのが、最も危険な読み方です。
理由は3つあります。
1. 解散できるわけではありません。
「解散価値」といっても、実際に解散して配ることはありません。 工場も設備も、売ればすぐ簿価どおりの値段で売れるとはかぎりません。
帳簿の1,000億円と、売ったときの1,000億円は違います。
2. 稼げない資産は、持っていても価値が増えません。
純資産が大きくても、それが利益を生まないなら、株主には意味がありません。 使われていない土地、動いていない工場、貯め込んだ現金。
市場が低く評価しているのは、資産の量ではなく、その使われ方です。
3. 1倍割れが何年も続くことがあります。
「いずれ1倍に戻る」という保証はありません。10年以上1倍を割ったままの会社は珍しくありません。
安いまま、安く在り続ける。これがバリュートラップです。
では、どこを見れば「戻る可能性がある1倍割れ」と区別できるのか。3つあります。
1. 改善する意思を表明しているか。
東証の要請を受けて、多くの会社が改善計画を開示しています。決算説明資料や適時開示で確認できます。
| 書かれていること | 見方 |
|---|---|
| 具体的な目標と期限 | 実行する意思がある |
| 「引き続き検討してまいります」 | 何も決まっていない |
2. 実際に行動しているか。
言葉ではなく、数字で確かめます。
これらはすべて、資本の効率を上げる行動です。
3. ROEが上向いているか。
最終的には、ここに表れます。ROEが上がらなければ、PBRも上がりません。
過去3期のROEを並べて、方向を見てください。
そして、最後に大事なことを書きます。
1倍割れは、市場の評価です。間違っていることもあれば、正しいこともあります。
市場が見落としている良い会社なら、見直される余地があります。しかし市場が正しく評価している場合、それは何年も変わりません。
「なぜ安いのか」を説明できないなら、その株を買う理由もありません。
この数字を、実際の上場企業で見る
いま決算の数字がそろっている上場企業3,609社で見ると、PBRの真ん中(中央値)は1.3倍です。
半分の会社が0.8倍から2.2倍のあいだに入っています。
PBRが1.0倍を下回る会社は1,290社で、全体の36%にあたります。
極端に大きい・小さい値の会社(上下5%ずつ、計362社)は、図が読めなくなるため図からは外しています。上の中央値や範囲には含めています。
業種によって「ふつう」が違う
PBRの中央値が高い業種と低い業種です(PBRが出ている会社が10社以上ある業種のみ)。 同じ数字でも、業種によって高い・低いの意味が変わります。
| 業種 | 中央値 | 社数 |
|---|---|---|
| 情報・通信業 | 2.3 倍 | 589社 |
| 医薬品 | 1.8 倍 | 77社 |
| 精密機器 | 1.8 倍 | 51社 |
| ⋮ | ||
| パルプ・紙 | 0.6 倍 | 22社 |
| 電気・ガス業 | 0.6 倍 | 27社 |
| 輸送用機器 | 0.7 倍 | 80社 |
よく知られた会社は、どのあたりにいるか
時価総額の大きい順に5社。業績の良し悪しで選んだものではありません。
| 会社 | PBR | 全体の中での位置 |
|---|---|---|
| トヨタ自動車 | 1.1 倍 | 下位42% |
| 三菱UFJフィナンシャル・グループ | 1.7 倍 | 上位35% |
| リクルートホールディングス | 17.9 倍 | 上位1% |
| ソフトバンクグループ | 1.5 倍 | 上位44% |
| アドバンテスト | 32.1 倍 | 上位1% |
関連する言葉
- PBR(株価純資産倍率) 会社が持っている正味の財産に対して、株価が何倍かを示す数字。1倍割れは割安とされる。
- BPS(1株あたり純資産) 会社を今たたんだとき、株1つに割り当てられる財産の額。PBRを計算するもとになる。
- ROE(自己資本利益率) 株主から預かったお金を使って、1年でどれだけ利益を出せたかを示す割合。
- 株主資本コスト 株主が最低限求めるリターン。ROEがこれを下回ると、稼いでいても価値を削っている。
- 自社株買い 会社が自分の会社の株を市場から買い戻すこと。1株あたりの価値が高まる。
- 最終更新
- 2026-09-17