有利子負債EBITDA倍率
何年分の稼ぎで借金を返せるかの目安。設備投資を無視した数字なので過信できない。
ひとことで言うと
いまの稼ぎのペースで、借金を返すのに何年かかるかを示す数字です。
もう少しくわしく
借金の重さは、金額だけでは分かりません。
1,000億円の借金でも、毎年500億円稼ぐ会社なら2年で返せます。毎年50億円しか稼げない会社なら20年かかります。
そこで、借金を稼ぎで割ります。
3つの言葉を確かめます。
| 言葉 | 中身 |
|---|---|
| 有利子負債 | 利息のつく借金。借入金、社債、コマーシャルペーパーなど |
| 現預金 | 手元の現金と預金 |
| EBITDA | 営業利益 + 減価償却費(おおよそ) |
有利子負債から現預金を引いた額を、純有利子負債(ネットデット)といいます。
手元に現金があるなら、その分は明日にでも返せます。実質の借金は、差し引いた額です。
なぜ利益ではなくEBITDAで割るのか。減価償却費は、現金が出ていかない費用だからです。借金を返すのに使えるお金に近い数字として使われます。
実際の数字で見る
ある会社の数字です。
| 金額 | |
|---|---|
| 借入金 | 900億円 |
| 社債 | 300億円 |
| 有利子負債の合計 | 1,200億円 |
| 現預金 | 300億円 |
| 営業利益 | 180億円 |
| 減価償却費 | 120億円 |
順に計算します。
純有利子負債 = 1,200億円 − 300億円 = 900億円
EBITDA = 180億円 + 120億円 = 300億円
倍率 = 900億円 ÷ 300億円 = 3.0倍
3年ぶんの稼ぎで借金を返せる計算になります。
現預金を引かない場合と比べます。
| 計算のしかた | 倍率 |
|---|---|
| 現預金を引く(純有利子負債) | 3.0倍 |
| 現預金を引かない | 4.0倍 |
どちらで計算されているかで、印象が変わります。 記事や資料で倍率を見たときは、現預金を引いているかを確かめてください。
よく言われる目安はこうです。
| 倍率 | 言われる評価 |
|---|---|
| 1倍未満 | 借金がほとんどない |
| 1〜3倍 | 無理のない範囲とされる |
| 3〜5倍 | 重いとされる |
| 5倍超 | かなり重い。業種によっては危険とされる |
ただしこれは目安にすぎません。 次で説明するとおり、業種で意味が変わります。
ここに注意
EBITDAは、設備投資を引いていない数字です。全額を返済に回せるわけではありません。
これがこの指標の最大の弱点です。
EBITDAは減価償却費を足し戻しています。減価償却費は現金が出ていかない費用ですが、その裏には、いつか設備を入れ替える必要があります。
| 現金の動き | |
|---|---|
| 減価償却費 | 今年は出ていかない |
| 設備の入れ替え | 数年後にまとめて出ていく |
工場や店舗を持つ会社は、EBITDAの何割かを設備投資に使い続けなければ事業が止まります。 返済に回せるのは残りだけです。
そのため、設備投資の重い業種ほど、同じ倍率でも苦しくなります。
| 業種 | EBITDAのうち設備投資に必要な割合 |
|---|---|
| 通信・電力・鉄道 | 大きい |
| 製造業 | 中くらい |
| ソフトウェア・サービス | 小さい |
もう3つ、注意点があります。
1. 現預金が本当に自由に使えるとはかぎりません。
純有利子負債は「現預金で返せる」という前提で計算します。しかし現預金の中には、海外子会社にあるものや、日々の商売を回すのに必要なものが含まれます。
全額を明日返済に使えるわけではありません。
2. EBITDAは会計基準の影響を受けにくい、という長所があります。
減価償却費やのれん償却費を足し戻すため、日本基準とIFRSの差が小さくなります。 海外の会社と比べるときに使われるのは、この理由です。
一方、足し戻すということは見えなくするということでもあります。買収の失敗も、設備の老朽化も、EBITDAには表れません。
3. 借り換えができるかどうかが本当の問題です。
借金は、期限が来たら借り換えるのが普通です。会社は借金をゼロにするために事業をしているわけではありません。
したがって本当に危ないのは、倍率が高いことそのものではなく、借り換えができなくなることです。
その兆しは、別の場所に出ます。
| 見る場所 | 何が分かるか |
|---|---|
| 有価証券報告書の借入金の明細 | 返済期限がいつ集中しているか |
| インタレストカバレッジレシオ | 利息を利益で払えているか |
| 継続企業の前提に関する注記 | 会社自身が危機を認識しているか |
そのうえで、この数字の使い方を書いておきます。
1年だけでなく、倍率が上がっているか下がっているかを見てください。
3.0倍という水準そのものより、去年が2.0倍で今年が3.0倍なのか、去年が4.0倍で今年が3.0倍なのかのほうが大事です。
| 動き | 読み方 |
|---|---|
| 下がっている | 借金を返せている。または稼ぎが増えた |
| 上がっている | 借金が増えた。または稼ぎが落ちた |
上がっている場合は、借金が増えたのか、EBITDAが減ったのかを分けて確かめてください。買収でどちらも動いていることがあります。
関連する言葉
- 有利子負債 利息を払う必要がある借金。多すぎると、金利が上がったときに利益を削られる。
- EBITDA 利息・税金・減価償却を引く前の利益。国や設備の違いを除いて会社を比べるための数字。
- インタレストカバレッジレシオ 本業の利益で利息を何倍まかなえるか。借金の額そのものより、この倍率が効く。
- 自己資本比率 会社の財産のうち、借金でない部分がどれだけあるかを示す割合。高いほど倒れにくい。
- フリーキャッシュフロー 本業で稼いだ現金から投資分を引いた、会社が自由に使えるお金。配当や返済の原資になる。
- 最終更新
- 2026-09-18