継続企業の前提(ゴーイングコンサーン)
会社が事業を続けられるかに疑いがあるときの注記。2段階あり、意味が違う。
ひとことで言うと
「この会社は事業を続けられないかもしれない」という警告が、決算書に書かれることです。
もう少しくわしく
決算書は、会社がこれからも事業を続けるという前提で作られています。この前提を継続企業の前提といいます。英語からゴーイングコンサーンとも呼ばれます。
なぜ前提が必要なのか。続けるかどうかで、資産の価値が変わるためです。
| 工場の評価 | |
|---|---|
| 事業を続ける | 使い続ける前提の価値 |
| やめる | 売ったらいくらか(たいてい安い) |
続けられないなら、決算書の数字そのものが意味を失います。
だから、疑いがあるときは決算書に書かなければなりません。 そして、2つの段階があります。
| 段階 | 名前 | 意味 |
|---|---|---|
| 軽いほう | 継続企業の前提に関する重要事象等 | 不安はあるが、対応策で解消できる見込み |
| 重いほう | 継続企業の前提に関する注記 | 重要な疑義があり、解消の見込みが立っていない |
この2つは、まったく重さが違います。 名前が似ているので混同されますが、区別してください。
実際の数字で見る
どういう状態で書かれるのか。きっかけになる事実の例です。
| 分類 | 具体例 |
|---|---|
| 財務 | 債務超過(純資産がマイナス) |
| 営業キャッシュフローが継続してマイナス | |
| 借入金の返済ができない | |
| 営業 | 主要な取引先を失った |
| 営業損失が続いている | |
| その他 | 重要な訴訟を抱えている |
| 法令違反で事業ができなくなる |
たとえば、こういう状態です。
| 金額 | |
|---|---|
| 純資産 | −50億円(債務超過) |
| 営業キャッシュフロー | −30億円(3期連続) |
| 手元の現金 | 40億円 |
| 1年以内に返す借入金 | 100億円 |
現金40億円で、100億円を返さなければなりません。 本業からも現金が入ってきていません。
ここで会社が「銀行と交渉中で、借換えの見込みがある」と説明できれば重要事象等、見込みが立たなければ注記になります。
そして、注記が付くと株価は大きく下げます。 上場廃止や倒産の可能性が現実味を帯びるためです。
ここに注意
注記が付いたら必ず倒産する、というわけではありません。
実際に、注記が付いた後に立ち直った会社もあります。
| その後 | 起きること |
|---|---|
| 増資に成功した | 資金が入り、注記が外れる |
| 不採算事業を売却した | 現金が入る |
| 支援者が現れた | 第三者割当増資など |
| 立ち直れなかった | 上場廃止・倒産 |
しかし、立ち直る場合でも、既存の株主には厳しいことが起こります。
大規模な増資で資金を入れれば、希薄化します。持っている株の価値は大きく薄まります。株価が戻っても、元の水準には届かないことが多いものです。
そして、確かめるべきことがあります。
どこに書かれているかで重さが分かります。
| 場所 | 重さ |
|---|---|
| 有価証券報告書の注記 | 最も重い |
| 決算短信の記載 | 同じ内容が速報として出る |
| 「重要事象等」として本文に記載 | 注記より軽い段階 |
有価証券報告書は監査を受けています。 監査法人が「疑義がある」と判断したということです。
もう3つ、知っておいてください。
1. 監査意見も一緒に見てください。
監査法人が出す意見には段階があります。
| 意見 | 意味 |
|---|---|
| 無限定適正意見 | 問題なし |
| 限定付適正意見 | 一部に問題がある |
| 意見不表明 | 判断できない。極めて重い |
意見不表明は、監査法人が「確かめられなかった」と言っている状態です。上場廃止につながることがあります。
2. 注記が外れるときも発表されます。
改善して注記が不要になれば、その旨が開示されます。外れたときは大きく買われることがあります。
ただし、外れたからといって強い会社になったわけではありません。 危機を脱しただけです。
3. スクリーニングでは出てきません。
PERやPBRでは、この危険は見えません。赤字でPERが計算できない銘柄として弾かれることはありますが、黒字のまま資金繰りに詰まる会社もあります。
確かめるには、決算短信か有価証券報告書を実際に開く必要があります。数字の一覧を見ているだけでは分かりません。
そして、初心者への助言を書いておきます。
注記が付いている会社に、無理に手を出す必要はありません。
「安いから」「立ち直れば何倍にもなるから」という理由で買う人がいます。確かにそういう例はあります。
しかし東証には約3,900社あります。わざわざ最も危険な会社を選ぶ理由はありません。
関連する言葉
- 有価証券報告書 年に一度、監査を受けて提出される会社の正式な報告書。数字の信頼性が最も高い資料。
- 決算短信 会社が3か月ごとに出す成績表。株価が最も大きく動くきっかけになる資料。
- 自己資本比率 会社の財産のうち、借金でない部分がどれだけあるかを示す割合。高いほど倒れにくい。
- 営業キャッシュフロー 本業で実際に入ってきた現金。利益と違い、ごまかしが効きにくい数字。
- 上場廃止 株式市場での売買ができなくなること。理由によって、株主が受け取れる金額はまったく違う。
- 最終更新
- 2026-09-18