内部統制報告書
決算書を正しく作る体制があるかを会社が自己評価した報告書。「重要な不備」は危険信号。
ひとことで言うと
正しい決算書を作る体制が整っているかを、会社自身が評価した報告書です。
もう少しくわしく
監査意見は、監査法人が決算書の中身を判定するものでした。
内部統制報告書は違います。判定するのは体制です。
数字が正しく作られる仕組みが、社内にあるか。
金融商品取引法により、上場企業は毎年これを提出します。有価証券報告書と一緒に出されます。
なぜ体制を見るのか。中身だけを見ても、翌年また間違うかもしれないからです。
| 見ているもの | |
|---|---|
| 監査意見 | 今年の決算書は正しいか |
| 内部統制報告書 | 正しく作れる仕組みがあるか |
たとえば、こういう仕組みです。
| 体制の例 |
|---|
| 売上を計上するとき、担当者と承認者を分けている |
| 現金を扱う人と、記帳する人を分けている |
| 子会社の数字を親会社が確認する手順がある |
| 不正の通報を受ける窓口がある |
同じ人が売上を立てて自分で承認できるなら、不正が起きても止まりません。 分けておけば、1人では起こせません。
実際の数字で見る
報告書の結論は、次の2つに分かれます。
| 結論 | 意味 |
|---|---|
| 内部統制は有効である | 問題なし。ほとんどの会社がこれ |
| 開示すべき重要な不備がある | 体制に問題がある |
「開示すべき重要な不備」が書かれていたら、それは強い警告です。
不備として挙げられる例です。
| 不備の内容 |
|---|
| 経理の人員が不足している |
| 子会社の管理が行き届いていない |
| 不適切な会計処理が発見された |
| 決算の締め切りに間に合わない体制 |
そして、その後に何が起こりうるかを見てください。
| 順番 | 起きること |
|---|---|
| 1 | 内部統制に重要な不備 |
| 2 | 過去の決算の訂正(訂正報告書の提出) |
| 3 | 特設注意市場銘柄への指定 |
| 4 | 改善されなければ上場廃止 |
不備の記載は、この流れの入口にあたることがあります。
なお、内部統制報告書には監査法人の監査が付きます(一定の要件を満たす会社では免除されることがあります)。
会社が「有効」と言っても、監査法人が違う判断をすることがあります。その場合、監査報告書にその旨が書かれます。
ここに注意
「有効」と書いてあっても、不正がないことの保証ではありません。
ここは正確に理解してください。
| 保証すること | 保証しないこと |
|---|---|
| 体制が整っていると会社が評価した | 不正が起きないこと |
| 監査法人もそう判断した | 過去に不正がなかったこと |
実際に、「内部統制は有効」と報告していた会社で、後に大きな不正が発覚した例があります。
体制があっても、経営陣が組織ぐるみで動かせば、仕組みは機能しません。
だから、この報告書は「これがあれば安心」ではなく、「これが崩れていたら危険」という読み方をします。
もう3つ、知っておいてください。
1. 訂正報告書が出ていないか確認してください。
過去の決算を訂正すると、訂正報告書が提出されます。EDINETで見られます。
何度も訂正している会社は、体制に問題がある可能性があります。
2. 経理人員の不足は、小さな会社で起こりやすいものです。
時価総額の小さい会社では、経理の担当者が1〜2人ということがあります。担当者の退職だけで体制が崩れます。
これ自体は悪意ではありませんが、数字の信頼性には関わります。
3. 読むのに時間はかかりません。
内部統制報告書は、数ページの短い書類です。結論の1行を見るだけなら数十秒です。
監査意見の確認とあわせて、買う前に一度だけ開いてみてください。
そして、この2つの書類の位置づけをまとめておきます。
業績を見るのは決算短信、数字を信じてよいかを見るのが有価証券報告書です。
| 見たいこと | 見る資料 |
|---|---|
| 儲かっているか | 決算短信・決算説明資料 |
| その数字を信じてよいか | 監査報告書・内部統制報告書 |
| 続けられる会社か | 継続企業の前提の記載 |
多くの人は1行目しか見ません。 2行目と3行目は、問題が起きたときにだけ効いてきます。そして問題は、起きてからでは間に合いません。
関連する言葉
- 有価証券報告書 年に一度、監査を受けて提出される会社の正式な報告書。数字の信頼性が最も高い資料。
- 監査意見と監査法人の交代 決算書が信用できるかの判定。交代の理由は適時開示で公表される。
- 継続企業の前提(ゴーイングコンサーン) 会社が事業を続けられるかに疑いがあるときの注記。2段階あり、意味が違う。
- 監理銘柄と特設注意市場銘柄 取引所が投資家に注意を促すために指定する区分。3種類あり、意味が違う。
- 適時開示 会社が重要な情報をその都度公表する制度。株価に影響する発表は、必ずここを通る。
- 最終更新
- 2026-09-18