見切り千両
損切りの価値は千両にも値するという格言。早く切るほど取り戻すのが楽になる。
ひとことで言うと
見切りをつけて損切りすることには、千両の価値があるという格言です。
もう少しくわしく
千両は、江戸時代の大金です。いまの感覚で数千万円から1億円にあたるとされます。
損を切ることに、それだけの価値がある。
続きのある言い方もあります。
| 言い方 | 意味 |
|---|---|
| 見切り千両 | 損切りの価値 |
| 見切り千両、損切り万両 | さらに強く言った形 |
なぜ、損を確定させることに価値があるのか。理由は3つあります。
1. 損が小さいうちに切れば、取り戻すのが楽です。
三割高下に向かえの記事に書いた計算です。
| 下げ幅 | 元に戻るのに必要な上昇率 |
|---|---|
| 10% | 11.1% |
| 30% | 42.9% |
| 50% | 100% |
早く切るほど、取り返しやすくなります。
2. 資金が自由になります。
塩漬けにしている株は、そのお金を他に使えません。 良い銘柄を見つけても、買う資金がありません。
3. 判断が戻ります。
含み損を抱えていると、その銘柄を冷静に見られなくなります。プロスペクト理論と授かり効果が働くためです。
売ってしまえば、ただの一銘柄として見られるようになります。
実際の数字で見る
100万円で買った株が下げたとします。切る時期による違いを見ます。
| 切った時点 | 残る資金 | 元の100万円に戻すのに必要 |
|---|---|---|
| −10% | 90万円 | +11.1% |
| −20% | 80万円 | +25.0% |
| −30% | 70万円 | +42.9% |
| −50% | 50万円 | +100% |
| −70% | 30万円 | +233% |
−10%で切れば、次の銘柄で11%上げれば元に戻ります。
−50%まで待つと、次で倍にしなければ戻りません。 これは現実的な目標ではありません。
そして、時間も失っています。
| 失うもの | |
|---|---|
| −10%で切った | 10万円 |
| −50%まで持った | 50万円 + その間の時間 |
その間に他の銘柄で運用できた可能性を、機会損失といいます。
ここに注意
「見切り千両」と「損切り貧乏」は、正反対のことを言っています。
同じ相場の世界に、両方の格言があります。
| 格言 | 言っていること |
|---|---|
| 見切り千両 | 早く切れ |
| 損切り貧乏 | 切りすぎて減る |
どちらも正しく、どちらも間違いです。場面によります。
| 場面 | どちらが効くか |
|---|---|
| 業績が悪化している | 見切り千両。切るべき |
| 相場全体が下げているだけ | 切ると損切り貧乏になりうる |
| 買った理由が消えた | 見切り千両 |
| 少し下げただけで慌てた | 損切り貧乏 |
見分ける問いは、これまでと同じです。
買った理由は、いまも成り立っているか。
理由が消えたなら見切り千両、理由が残っているなら切る必要はありません。
値段が下がったこと自体は、理由ではありません。
もう3つ、実際的なことを書きます。
1. 切る水準は、買う前に決めてください。
下げてから考えると、必ず甘くなります。 これは意志の問題ではなく、人間の性質です。
2. 切る理由を決めてください。
値段だけでなく、事実で決めるほうが確かです。
| 決め方 | 例 |
|---|---|
| 値段で決める | −15%で切る |
| 事実で決める | 営業利益が2期続けて減ったら切る |
| 時間で決める | 半年たっても状況が変わらなければ見直す |
3. 切った後を見ないでください。
切った株がその後上がると、「切らなければよかった」と感じます。 これは後知恵です。
上がる可能性があったことと、切る判断が間違っていたことは、別です。 切った時点の情報で正しければ、それでよいのです。
そして、この格言のいちばん大事な点を書きます。
損切りは、失敗の後始末ではなく、判断の一部です。
損切りは必ず起こります。 何を買っても、間違うことはあります。
だから、損切りを含めて計画を立てるのが正しい形です。「損切りしないで済む買い方」を探すのではなく、「損切りしても致命傷にならない大きさで買う」のが答えです。
それを決めるのがポジションサイズです。
関連する言葉
- 損切り(ロスカット) 損が出ている株を売って、損失を確定させること。傷が広がる前に止める行為。
- 三割高下に向かえ 3割動いたら反対売買を考えろという格言。下げ幅と上げ幅は釣り合わない。
- プロスペクト理論 損失を利益の2倍以上の強さで感じる性質。損切りできない理由を説明する。
- 塩漬け(しおづけ) 損が出た株を売るに売れず、長期間持ち続けてしまう状態のこと。
- 損切り貧乏 小さな損切りを繰り返した結果、少しずつ資金を減らしてしまう状態。
- 最終更新
- 2026-09-18