授かり効果(保有効果)
自分が持っているものを高く評価してしまう性質。持った瞬間に見方が変わる。
ひとことで言うと
自分が持っているというだけで、そのものを高く評価してしまう性質です。
もう少しくわしく
保有効果とも呼ばれます。プロスペクト理論と同じく、行動経済学の研究から出てきた考え方です。
有名な実験があります。
| 順番 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 半数の人にマグカップを配る |
| 2 | 配られた人に「いくらなら売るか」と聞く |
| 3 | 配られなかった人に「いくらなら買うか」と聞く |
同じマグカップです。しかし、答えは大きく食い違いました。
| 答えた金額 | |
|---|---|
| 持っている人(売値) | 高い |
| 持っていない人(買値) | 低い |
持った瞬間に、価値が上がって見えるのです。数分前まで、その人はカップを持っていませんでした。
株でも、まったく同じことが起こります。
実際の数字で見る
打診買いの記事で書いたことと重なります。
同じ銘柄について、持つ前と持った後で見方が変わります。
| 持っていないとき | 持った後 | |
|---|---|---|
| 悪いニュース | 冷静に評価する | 「一時的だ」と考える |
| 良いニュース | 話半分に聞く | 「やはり正しかった」 |
| 売るべきか | 検討できる | 手放したくない |
そして、買う気がなかった銘柄についてはこうです。
| 感じ方 | |
|---|---|
| 持っている銘柄が−10% | 「そのうち戻る」 |
| 持っていない銘柄が−10% | 「下げているから危ない」 |
同じ−10%を、正反対に解釈しています。
数字で考えると、おかしさがはっきりします。
いまA社株を100万円分持っていて、現金が100万円あるとします。
| 問い | 答え |
|---|---|
| A社株をもう100万円買うか | 「いや、もう十分持っている」 |
| A社株100万円分を売るか | 「いや、売りたくない」 |
買いたくもないが、売りたくもない。 これは、いまの保有量がちょうどよいと判断したわけではありません。
持っているから、そのままにしておきたいだけです。
ここに注意
この性質は、「ガチホ」という言葉に守られてしまいます。
長く持つこと自体は、良い方針です。長期投資の記事に書いたとおり、費用と税の面で確実に有利になります。
しかし、授かり効果による「動きたくない」を、長期投資と呼んでしまうことがあります。
見分ける問いは、これまで書いてきたものと同じです。
いま現金で持っていたとして、この株をこの金額だけ買うか。
金額まで含めて問うのが要点です。
| 答え | 意味 |
|---|---|
| 「同じだけ買う」 | いまの保有は適切 |
| 「半分なら買う」 | 持ちすぎている |
| 「買わない」 | 持っている理由がない |
2つ目の答えが多いはずです。持ちすぎていると気づいても、減らす人は多くありません。 それが授かり効果です。
もう3つ、実際的な対処を書きます。
1. 定期的に配分を確かめてください。
リバランスの考え方です。年に1回、各銘柄が資産の何%を占めるかを見る。決めた割合を大きく超えていたら、機械的に減らす。
判断ではなく作業にすれば、授かり効果が働きにくくなります。
2. 打診買いから始めてください。
少額で持ってみると、自分の見方がどう変わるかが分かります。5万円で落ち着いていられないなら、30万円では耐えられません。
3. 買う前に書いたものを読み返してください。
確証バイアスの記事にも書きましたが、買った日に書いた「売る条件」が、ここでも効きます。
持った後の自分は、持つ前の自分よりその株に甘くなっています。 だから、持つ前の自分が書いたものを判断の基準にします。
そして、この性質について公平に書いておきます。
授かり効果があるから、長く持てるという面もあります。
株価が下げるたびに売ってしまう人は、長期投資ができません。 多少の値動きで手放さない性質は、時に助けになります。
問題は、それが会社を見ての判断か、ただ手放したくないだけかを区別できないことです。
区別する方法は1つだけです。買う前に、売る条件を書いておくことです。
書いてあれば、そのとおりに動けばよいだけです。判断する必要がなくなります。
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- 最終更新
- 2026-09-18