会計監査人
決算書を外から検める監査法人。株主総会で選ばれ、株主が解任を求めることもできる。
ひとことで言うと
会社の決算書が正しいかを、外から検める監査法人や公認会計士のことです。
もう少しくわしく
決算書は、会社が自分で作ります。
作った本人が「正しい」と言っても、外からは確かめようがありません。そこで、会社の外にいる専門家が検めます。 それが会計監査人です。
上場企業では、会計監査人を置くことが義務です。実際には監査法人が担うのがほとんどです。
| 関係する人 | 役割 |
|---|---|
| 会社の経理部門 | 決算書を作る |
| 会計監査人(監査法人) | 作られた決算書を検める |
| 監査役・監査等委員会 | 会社の中から経営を監視する |
| 株主 | 検められた決算書を読む |
監査役と会計監査人は別です。混同しやすいので表にします。
| 監査役 | 会計監査人 | |
|---|---|---|
| どこにいるか | 会社の中 | 会社の外 |
| 資格 | 資格は不要 | 公認会計士または監査法人 |
| 見るもの | 経営全般 | 決算書の数字 |
| 選ぶ人 | 株主総会 | 株主総会 |
どちらも株主総会で選ばれます。 経営陣が勝手に決めるものではありません。
実際の数字で見る
会計監査人の仕事の結果は、監査報告書として公表されます。有価証券報告書の中にあります。
そこに書かれる監査意見は4種類です。
| 監査意見 | 意味 | 見かける頻度 |
|---|---|---|
| 無限定適正意見 | 問題なし | ほとんどがこれ |
| 限定付適正意見 | 一部に問題があるが、全体としては適正 | まれ |
| 不適正意見 | 決算書は適正でない | 極めてまれ。危険 |
| 意見不表明 | 判断できる材料がそろわなかった | 極めてまれ。危険 |
下の2つが出ている会社は、それだけで強い警告です。
もう1つ、監査報酬という数字があります。有価証券報告書に載っています。
| 金額の例 | |
|---|---|
| 監査証明業務に対する報酬 | 5,000万円 |
| 非監査業務に対する報酬 | 2,000万円 |
非監査業務は、監査以外の仕事(助言など)です。
この金額が監査報酬に比べて大きいと、「検める立場の人が、同じ相手から別の仕事を大量に受けている」ことになります。独立性の観点から見る人がいる数字です。
ここに注意
会計監査人が交代したときは、理由を確かめてください。
交代そのものは、珍しいことではありません。任期満了、報酬の見直し、監査法人の体制など、事情はさまざまです。
しかし、注意すべき交代もあります。
| 交代の書かれ方 | 読み方 |
|---|---|
| 任期満了による | ふつう |
| 監査報酬の見直し | ふつう |
| 監査法人側からの辞任 | 理由を確かめる |
| 意見の相違 | 強い警告 |
監査法人が自分から降りた場合は、その理由が適時開示に書かれます。
「会社と会計処理について見解の相違があった」といった記述があれば、それは重大な情報です。
また、大手から小規模な監査法人への交代が続く会社もあります。これだけで問題とは言えませんが、交代の理由と合わせて見る価値があります。
もう4つ、知っておいてください。
1. 監査は「不正がない」ことの証明ではありません。
監査は、すべての取引を1つずつ調べるものではありません。 一部を抜き出して確かめる方法が中心です。
そのため、巧妙に隠された不正が見つからないことがあります。過去の不正会計の多くは、監査を通過した後に発覚しました。
「無限定適正意見だから安全」とまでは言えません。 ただし、意見不表明や不適正意見が出ている会社は危ないとは言えます。
| 言えること | 言えないこと |
|---|---|
| 悪い意見=危ない | 良い意見=安全 |
2. 監査上の主要な検討事項(KAM)が書かれます。
監査報告書には、監査人がとくに注意して見た項目が書かれるようになっています。
| よく書かれる項目 | なぜ注意が要るか |
|---|---|
| のれんの評価 | 減損するかの判断が難しい |
| 収益の認識 | 計上する時期の判断が分かれる |
| 繰延税金資産の回収可能性 | 将来の利益を見込む必要がある |
| 工事の進行基準 | 進み具合の見積もりが入る |
ここに書かれている項目は、その会社で判断が難しい部分です。投資家にとっても、見るべき場所を教えてくれます。
3. 株主総会で選び直します。
会計監査人は1年ごとに選任され、株主総会で別段の決議がなければ再任されたものとみなされます。
株主は、解任や不再任を議案として求めることもできます。 実際に行われることは多くありませんが、株主の側に権限があるという点は知っておいてください。
4. 交代は適時開示で分かります。
「公認会計士等の異動に関するお知らせ」という開示が出ます。証券取引所のサイトで誰でも読めます。
そのうえで、確認の手順を書いておきます。
持っている銘柄について、年に一度、監査報告書の意見だけは見てください。
有価証券報告書の中の、1ページです。
| 書いてあること | 次にすること |
|---|---|
| 無限定適正意見 | それ以上は読まなくてよい |
| それ以外 | 中身を必ず読む |
KAMまで読めば、その会社のどこが難しいかが分かります。 読まなくても、意見の1行だけは確かめる価値があります。
関連する言葉
- 監査意見と監査法人の交代 決算書が信用できるかの判定。交代の理由は適時開示で公表される。
- コーポレートガバナンス・コード 上場企業が守るべき行動原則。法律ではなく、従うか説明するかを選ぶ形をとる。
- 株主総会 会社の重要事項を株主が決める会議。1株でも持っていれば議決権が得られる。
- 有価証券報告書 年に一度、監査を受けて提出される会社の正式な報告書。数字の信頼性が最も高い資料。
- 継続企業の前提(ゴーイングコンサーン) 会社が事業を続けられるかに疑いがあるときの注記。2段階あり、意味が違う。
- 最終更新
- 2026-09-18