ROIC(投下資本利益率)
事業に投じたお金が生む利益率。資金を集める費用(WACC)を上回っているかで見る。
ひとことで言うと
事業に投じたお金が、1年でどれだけの利益を生んだかを示す割合です。
もう少しくわしく
ROICは Return On Invested Capital の略。日本語では投下資本利益率です。
| 指標 | 分子 | 分母 | 見ているもの |
|---|---|---|---|
| ROE | 当期純利益 | 株主資本 | 株主のお金の効率 |
| ROA | 当期純利益 | 総資産 | 資産全体の効率 |
| ROIC | 税引後営業利益 | 事業に使っているお金 | 本業の効率 |
ROICの特徴は2つです。
- 分子が営業利益(本業だけ。株の売却益などを含まない)
- 分母が事業に使っているお金だけ(遊んでいる現金や投資有価証券を除く)
つまり本業に投じたお金が、本業でどれだけ稼いだかを見ています。
実際の数字で見る
ROICだけを見ても、良し悪しは判断できません。比べる相手が必要です。
それがWACC(ワック)です。
WACC = そのお金を集めるのにかかる費用の率
- 借りたお金 … 金利を払う(年1〜3%程度)
- 株主から預かったお金 … 株主が期待する利回り(年5〜8%程度)
この2つを、金額の割合で加重平均したものがWACCです。
| A社 | B社 | |
|---|---|---|
| ROIC | 11.2% | 4.1% |
| WACC | 5.8% | 6.3% |
| 差 | +5.4ポイント | -2.2ポイント |
A社は、6%で集めたお金を11%で回しています。差の5.4%分だけ、価値を生んでいます。
B社は、6.3%で集めたお金を4.1%でしか回せていません。事業を続けるほど、価値が減っています。
この差をEVAスプレッドと呼びます。
ここに注意
ROICがWACCを下回っている会社は、事業をやめて現金を返したほうが株主のためになります。
厳しい言い方ですが、計算上はそうなります。集めたお金を、集める費用より低い利回りでしか運用できていないためです。
近年、東京証券取引所がPBR1倍割れの企業に改善を要請した背景にも、この考え方があります。PBRが1倍を割るということは、市場が「この会社は価値を生んでいない」と判断していることを意味するためです。
ただし、いくつか注意すべき点があります。
1. WACCは外部から正確に計算できません。
株主が期待する利回りは、直接観測できません。推定するしかなく、前提の置き方で数値が変わります。 会社が公表しているWACCも、その会社自身の推定です。
2. ROICの計算方法に統一された定義がありません。
分母を「有利子負債+株主資本」とするか「総資産−流動負債」とするか、分子を営業利益とするかNOPATとするか。会社によって計算式が違います。
そのため、他社と比べるときは計算式が同じかを確認する必要があります。
3. 短期の数字に振り回されない。
大型の設備投資をした直後は、分母が増えてROICが下がります。しかしその投資が数年後に効いてくるなら、一時的な低下は問題ではありません。
3〜5年の推移で見てください。
なお、当サイトはROICを表示していません。理由は、分母の定義が定まっておらず、EDINETから機械的に取得できる項目だけでは正しく計算できないためです。
代わりにROEとROAを表示しています。 ROEが高くROAが低い会社は借金で数字を作っている、という見分け方は、ROICを使わなくてもできます。
関連する言葉
- ROE(自己資本利益率) 株主から預かったお金を使って、1年でどれだけ利益を出せたかを示す割合。
- ROA(総資産利益率) 会社が持つ資産全体で、どれだけ利益を生んだかを示す割合。借金の影響を受けないROE。
- 有利子負債 利息を払う必要がある借金。多すぎると、金利が上がったときに利益を削られる。
- 営業利益 本業だけで稼いだ利益。会社の実力を最も素直に表す数字。
- 最終更新
- 2026-09-16