予想と実績の違い(予想PERと実績PER)
指標には過去の確定値と会社予想の2種類がある。同じ「PER」でも中身が違う。
ひとことで言うと
同じ「PER15倍」でも、確定した数字か、会社の予想かで意味が変わります。
もう少しくわしく
PERは、次の式で計算します。
PER = 株価 ÷ 1株あたり利益(EPS)
ここで問題になるのが、どのEPSを使うかです。
| 呼び方 | 使うEPS | 性質 |
|---|---|---|
| 実績PER | 前の期に確定した利益 | 確かだが、古い |
| 予想PER | 今期の会社予想 | 新しいが、外れる |
どちらも正しく、どちらも不完全です。
実績は確定していますが、過ぎたことです。来年その会社がどうなるかは教えてくれません。
予想は今期の話ですが、会社が自分で出した見込みです。当たる保証はありません。
そして、ここが大事な点です。
証券会社のサイトが表示する「PER」は、たいてい予想PERです。
「PER15倍だから割安」と判断するとき、それは会社の予想を信じているということになります。
実際の数字で見る
同じ会社、同じ株価で、2つのPERを計算します。株価は1,500円とします。
| EPS | PER | |
|---|---|---|
| 実績(前期の確定値) | 100円 | 15.0倍 |
| 予想(今期の会社予想) | 125円 | 12.0倍 |
同じ株価なのに、15倍にも12倍にも見えます。
会社が「今期は25%の増益を見込む」と予想しているため、予想PERのほうが低く出ます。
ここで、下方修正が出たとします。
| EPS | PER | |
|---|---|---|
| 修正前の予想 | 125円 | 12.0倍 |
| 修正後の予想 | 80円 | 18.8倍 |
株価が1円も動かないまま、PERは12倍から18.8倍になりました。
「12倍だから割安」と思って買った人は、割安ではなかったことになります。会社の予想が変わっただけで、判断の前提が消えます。
ここに注意
会社の予想は、中立ではありません。
会社が自分で出す予想には、傾向があります。
| 会社の立場 | 起きやすいこと |
|---|---|
| 期のはじめ | 保守的に出すことがある(後で上方修正しやすい) |
| 期の途中 | 届きそうにないと下方修正する |
| 経営陣の都合 | 高く出したい動機が働くこともある |
どちらに偏るかは会社によります。その会社が過去に予想をどれだけ外してきたかを見るのが、いちばん確かです。
決算短信には、前期の予想と実績が並んで載っています。 数年分さかのぼれば、その会社の予想の癖が見えます。
| 期 | 期初の予想 | 実績 | 差 |
|---|---|---|---|
| 3期前 | 100億円 | 85億円 | −15% |
| 2期前 | 110億円 | 92億円 | −16% |
| 前期 | 120億円 | 99億円 | −18% |
3期続けて予想を下回っている会社の今期予想を、そのまま信じてよいでしょうか。この確認は、数分でできます。
もう2つ、実際的な注意点があります。
1. 数字を比べるときは、種類をそろえてください。
A社の予想PERとB社の実績PERを比べても、意味がありません。同じサイトの同じ欄で比べるのが安全です。
2. 予想を出さない会社があります。
業績の見通しが立たないとして、予想を「未定」とする会社があります。この場合、予想PERは表示されません。
これは悪いことではありませんが、不確実性が高いというしるしではあります。
そして、この記事でいちばん覚えてほしいのは次のことです。
指標の数字だけを見て、その中身を見ないのが、いちばん危ない使い方です。
PER・PBR・ROE・配当利回り、いずれも「どの数字で計算したものか」で答えが変わります。表示されている数字は、誰かが何かを選んだ結果です。
関連する言葉
- PER(株価収益率) 会社が1年で稼ぐ利益に対して、株価が何倍かを示す数字。低いほど割安とされる。
- EPS(1株あたり利益) 会社の利益を株の数で割った数字。株1つが1年でいくら稼いだかを表す。
- 上方修正・下方修正 会社が期の途中で業績見通しを変えること。決算発表そのものより株価が動くことがある。
- 決算短信 会社が3か月ごとに出す成績表。株価が最も大きく動くきっかけになる資料。
- 四半期開示 3か月ごとの業績発表。2024年度から四半期報告書が廃止され、決算短信に一本化された。
- 最終更新
- 2026-09-17