二階建て
現物株を担保に、同じ銘柄を信用でも買うこと。下げたとき損失が二重に効く。
ひとことで言うと
同じ銘柄を、現物でも信用でも持つことです。
もう少しくわしく
信用取引では、持っている株を担保にできます。これを代用有価証券といいます。
ここで、多くの人がやってしまうことがあります。
A社の株を担保にして、信用でもA社の株を買う。
1階が現物のA社株、その上に信用のA社株が乗るので、二階建てと呼ばれます。
なぜ危ないのか。同じ銘柄なので、悪いことが同時に起きるためです。
A社の株が下がると、3つのことが同時に起きます。
| 起きること | 中身 |
|---|---|
| 1. 現物が値下がりする | そのまま含み損 |
| 2. 信用の建玉も値下がりする | こちらも含み損 |
| 3. 担保の価値が下がる | 保証金率が急落する |
普通の信用取引なら、1と2は別々の銘柄で起きます。片方が下げても、もう片方は無事かもしれません。
二階建ては違います。下げるときは全部いっしょに下げます。 しかも担保まで痩せるので、追証が来やすくなります。
実際の数字で見る
元手100万円で比べます。
現物だけの場合 … A社株を100万円買う。
二階建ての場合 … A社株を100万円買い、それを担保にA社株を信用で200万円買う。
| A社の下落率 | 現物だけ | 二階建て |
|---|---|---|
| 10%下落 | −10万円(−10%) | −30万円(−30%) |
| 20%下落 | −20万円(−20%) | −60万円(−60%) |
| 30%下落 | −30万円(−30%) | −90万円(−90%) |
30%下げただけで、元手の9割が消えます。
内訳はこうです。
| 計算 | |
|---|---|
| 現物100万円が30%下落 | −30万円 |
| 信用200万円が30%下落 | −60万円 |
| 合計 | −90万円 |
株価は30%しか下げていません。倒産したわけでも、不祥事が起きたわけでもありません。 決算が少し悪かった程度でも起こる下落幅です。
そして、この前に追証が来ます。担保の価値が下がっているためです。入金できなければ、いちばん下げたところで強制決済されます。
ここに注意
二階建ては、それと気づかずに出来上がります。ここが怖いところです。
多くの人は、最初から二階建てにしようと思ってやりません。順番はこうです。
- A社の株を現物で買う。これは普通のこと
- A社が下がる。「安くなった、いい機会だ」と思う
- しかし現金が残っていない
- 持っているA社株を担保にすれば買えると気づく
- 信用でA社株を買い増す
各段階は、それぞれもっともらしく見えます。 気づいたときには、資産の全部が1銘柄に、しかも借金つきで乗っています。
これはナンピンと同じ心の動きです。違うのは、借りたお金でやっている点だけです。
見分ける方法は簡単です。
いま持っている銘柄の数を数え、その銘柄が半分になったら資産がいくら減るかを計算してください。
元手より大きく減るなら、二階建てになっています。
対処は3つあります。
1. 現物と信用で、同じ銘柄を持たない。
これだけで防げます。信用で買うなら、担保にしている銘柄とは別の銘柄にしてください。
2. 代用有価証券の掛け目を知っておく。
担保にできる金額は、株価の満額ではありません。一般に株価の80%程度(掛け目)で評価されます。そして株価が下がれば、担保の評価額も下がります。
100万円の株を担保にすれば80万円分。株価が30%下がれば、担保は56万円分になります。建玉は減らないのに、担保だけ減ります。
3. 「機会を逃す」より「退場する」ほうが重い、と考える。
安くなった銘柄を買い増せないのは、確かにもったいないことです。しかし、買い増せる資金がないのは、すでに使いすぎているという合図でもあります。
現金がないときに借りて買うのは、機会をつかむ行為ではありません。逃げ道をなくす行為です。
関連する言葉
- 信用取引 証券会社からお金や株を借りて売買する仕組み。手持ち以上の金額を動かせるが、損も拡大する。
- 追証(おいしょう) 信用取引で損が膨らみ担保が不足したとき、証券会社から追加の入金を求められること。
- 買いは家まで売りは命まで 買いの損は家を失う程度で済むが、空売りの損には限りがないという格言。
- ポジションサイズ 1回の取引にいくら投じるかの決め方。銘柄選びより結果を左右する。
- ナンピン(難平) 買った株が下がったとき、さらに買い増して平均の取得価格を下げる手法。初心者が資産を失う最大の原因でもある。
- 最終更新
- 2026-09-17