買いは家まで売りは命まで
買いの損は家を失う程度で済むが、空売りの損には限りがないという格言。
ひとことで言うと
買いの損には限りがあるが、空売りの損には限りがないという格言です。
もう少しくわしく
古くから伝わる言葉です。空売りの危険を、これ以上ないほど端的に言い表しています。
なぜ「命まで」なのか。理由は算数です。
| 株価はどこまで動くか | |
|---|---|
| 買った場合 | 下がっても0円まで |
| 空売りした場合 | 上がる方向に上限がない |
株価は0円より下にはなりません。 だから買った人の損失は、投じた金額が上限です。100万円買えば、最悪でも100万円失って終わります。
空売りは違います。株価が2倍になれば損失は元手と同額、5倍になれば4倍の損失です。株価に上限がない以上、損失にも上限がありません。
実際の数字で見る
買値100円で100株の場合を並べます。
| 株価 | 買った人 | 空売りした人 |
|---|---|---|
| 0円 | −10,000円 | +10,000円 |
| 50円 | −5,000円 | +5,000円 |
| 100円 | 0円 | 0円 |
| 200円 | +10,000円 | −10,000円 |
| 300円 | +20,000円 | −20,000円 |
| 400円 | +30,000円 | −30,000円 |
買った人の損失は、株価0円の−10,000円で止まります。 それ以上は減りようがありません。
空売りした人の損失は、株価が上がるほど増え続けます。 400円で−30,000円、1,000円なら−90,000円です。
元手が10,000円だったとすると、こうなります。
| 株価 | 空売りした人の損失 | 元手に対して |
|---|---|---|
| 200円 | −10,000円 | 元手が消える |
| 300円 | −20,000円 | 元手の2倍の借金 |
| 400円 | −30,000円 | 元手の3倍の借金 |
元手を失うだけでは終わりません。 差額を支払う義務が残ります。
ここに注意
「株価が4倍になるなんてめったにない」と考えるのが、いちばん危険です。
実際に起きます。しかも、空売りが多い銘柄ほど起きやすいという性質があります。
理由は踏み上げです。
- 空売りした人が増える
- 何かのきっかけで株価が上がる
- 空売りした人が慌てて買い戻す
- その買い戻しでさらに上がる
- 3と4が繰り返される
空売りの決済は「買い」です。 損失を止めようとする行為が、そのまま株価を押し上げます。
普通の下落なら、売りが売りを呼んでも、いつか0円で止まります。踏み上げには止まる理屈がありません。
そして、実務上はもっと早く終わります。
上限まで待たずに、追証で強制的に決済されます。
証券会社は、損失が担保を超えないうちに手を打ちます。追証を求められ、入金できなければ強制決済です。
これは、ある意味で救いです。損失が無限に膨らむ前に止まります。しかし同時に、自分の意思と関係なく、最悪の値段で決済されるということでもあります。
この格言が教えているのは、空売りをするなということではありません。
買いと空売りでは、間違えたときの代償がまったく違う。
だから、空売りをするなら必ず損切りの注文を先に入れてください。 「戻るまで待つ」という考え方は、買いでは通用することがありますが、空売りでは通用しません。 待っているあいだに、損失は上限なく増えます。
なお、この格言には続きがあります。「売りは命まで」の後に「しかし売り方が正しいときは、買い方より速く儲かる**」と言う人もいます。下げるときのほうが速いためです。
その速さと、限りのない損失は、同じ性質の裏表です。
関連する言葉
- 空売り(からうり) 持っていない株を借りて先に売り、値下がりしたら買い戻して差額を得る手法。
- 踏み上げ(ふみあげ) 空売りしていた人が損失を止めるために買い戻し、その買いが株価をさらに押し上げる現象。
- 追証(おいしょう) 信用取引で損が膨らみ担保が不足したとき、証券会社から追加の入金を求められること。
- 信用取引 証券会社からお金や株を借りて売買する仕組み。手持ち以上の金額を動かせるが、損も拡大する。
- 二階建て 現物株を担保に、同じ銘柄を信用でも買うこと。下げたとき損失が二重に効く。
- 最終更新
- 2026-09-17