株式移転・株式交換
会社を完全子会社にする手続き。持っている株が別の会社の株に変わる。
ひとことで言うと
会社どうしが一緒になるとき、持っている株が別の会社の株に置き換わる仕組みです。
もう少しくわしく
どちらも、ある会社を完全子会社(株を100%持つ子会社)にするための手続きです。違いは、親会社が既にあるかどうかです。
| 株式交換 | 株式移転 | |
|---|---|---|
| 親会社 | すでにある会社 | 新しく作る |
| よくある場面 | A社がB社を買収する | A社とB社が経営統合する |
| 結果 | B社がA社の完全子会社に | 新しい持株会社の下に両社が並ぶ |
株式交換は、買収の手段です。A社がB社を完全子会社にしたいとき、現金の代わりに自社株を渡します。
株式移転は、対等な統合でよく使われます。「〇〇ホールディングス」という会社が新しくでき、その下に両社が入ります。銀行の統合などで見られる形です。
株主から見ると、どちらも同じことが起きます。
持っていた株が、別の会社の株に変わります。
売った覚えがなくても、株主総会で決議されればそうなります(反対する手段はありますが、後述します)。
実際の数字で見る
交換比率という数字が決定的に重要です。
A社がB社を株式交換で完全子会社にするとします。交換比率はB社株1株に対してA社株0.6株と決まったとします。
B社株を1,000株持っている人は、こうなります。
| 内容 | |
|---|---|
| 持っていた株 | B社株 1,000株 |
| 交換比率 | 0.6 |
| 受け取る株 | A社株 600株 |
この600株の価値は、A社の株価しだいです。
| A社の株価 | 受け取る価値 |
|---|---|
| 2,000円 | 120万円 |
| 1,800円 | 108万円 |
| 1,500円 | 90万円 |
A社の株価が下がれば、受け取る価値も下がります。
ここが現金での買収(TOB)と決定的に違う点です。
| TOB(現金) | 株式交換 | |
|---|---|---|
| 受け取るもの | 現金 | 相手の会社の株 |
| 金額 | 確定している | 変動する |
発表から実行まで数か月かかります。その間にA社の株価が下がれば、B社の株主が受け取る価値は目減りします。
だから発表後、B社の株価はA社の株価に連動して動くようになります。
ここに注意
発表された比率が、自分にとって有利かどうかを確かめてください。
比率は、両社の話し合いで決まります。第三者機関の算定書が出されますが、必ず公正とはかぎりません。
確かめる材料があります。
| 見るもの | どこにあるか |
|---|---|
| 交換比率とその根拠 | 適時開示の資料 |
| 算定した機関と算定方法 | 同上 |
| 発表前の両社の株価 | チャート |
発表前の株価から、実質的にいくらで評価されたかを計算できます。
B社株1株 = A社株0.6株 × A社の株価
A社の株価が2,000円なら、B社株は1,200円と評価されたことになります。発表前のB社の株価が1,000円だったなら、20%の上乗せがあったと分かります。
上乗せが小さい、あるいは発表前より低い場合、その条件に納得できないなら反対できます。
反対株主の株式買取請求権という制度があります。
| 手順 | 中身 |
|---|---|
| 1 | 株主総会の前に、反対する旨を会社に通知する |
| 2 | 株主総会で反対する |
| 3 | 期間内に買取を請求する |
会社に「公正な価格で買い取れ」と請求できます。価格で折り合わなければ、裁判所が決めます。
ただし、手続きは面倒で、時間もかかります。 少額の株主が使うことは現実には多くありません。制度としてあることを知っておく程度で十分です。
そして、実務上いちばん多い注意点を書きます。
1. 端数が出ると現金でもらいます。
比率0.6で100株持っていれば、ちょうど60株です。しかし比率が0.625なら62.5株になります。株は0.5株では持てません。
このような端数は、現金で精算されます。上の例なら、62株を受け取り、0.5株分は現金で支払われます。
2. 交換の時点では課税されないのが原則です。
株式交換・株式移転で株が入れ替わっただけでは、原則として譲渡益課税は生じません(一定の要件を満たす場合)。その後、受け取った株を売ったときに課税されます。
このとき、取得価額は元の株のものを引き継ぎます。 忘れていると、後で申告に困ります。交換時の資料は保管してください。
3. 子会社になった会社の株は上場廃止になります。
完全子会社なので、株主は親会社だけです。その会社の株としては、市場で売買できなくなります。
関連する言葉
- TOB(株式公開買付け) 買い手が「この価格で買います」と公表して株を買い集めること。市場価格より高い値段がつくことが多い。
- MBO 経営陣が自分の会社の株を買い取って、上場をやめること。株主には買取価格が支払われる。
- 上場廃止 株式市場での売買ができなくなること。理由によって、株主が受け取れる金額はまったく違う。
- 増資 会社が新しく株を発行してお金を集めること。1株あたりの価値が薄まるため、株価が下がりやすい。
- 連結決算 親会社と子会社をまとめた決算。投資判断に使うのは原則こちら。
- 最終更新
- 2026-09-17