引当金
将来起きそうな支出に、あらかじめ備えて計上する費用。見積もりなので幅がある。
ひとことで言うと
将来起きそうな支出に備えて、あらかじめ費用として計上しておくお金です。
もう少しくわしく
まだ支払っていないが、いずれ払う可能性が高いもの。それを今のうちに費用にしておく仕組みです。
主な種類です。
| 引当金 | 何に備えるか |
|---|---|
| 貸倒引当金 | 売掛金が回収できなくなること |
| 退職給付引当金 | 従業員に将来払う退職金 |
| 賞与引当金 | 次のボーナス |
| 製品保証引当金 | 保証期間中の修理費用 |
| 返品調整引当金 | 返品されること |
なぜこうするのか。その費用が発生する原因は、すでに今起きているからです。
たとえば退職金。10年後に払うお金ですが、その人が今年働いた分は、今年の費用です。10年後にまとめて計上すると、その年だけ大赤字になり、実態と合いません。
引当金を計上すると、次のことが起きます。
- 費用が増える → その年の利益が減る
- 負債が増える → 純資産が減る
つまり引当金を積むと、見かけの業績は悪くなります。
実際の数字で見る
貸倒引当金の例です。売掛金が227億円あり、そのうち3%が回収できないと見積もった場合。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売掛金 | 227億円 |
| 貸倒引当金 | -6.8億円 |
| 貸借対照表に載る額 | 220.2億円 |
そして損益計算書には、6.8億円が費用として計上されます。
ここで注意してほしいのは、3%という数字は見積もりだということです。
| 見積もり | 引当金 | 利益への影響 |
|---|---|---|
| 1%と見積もる | 2.3億円 | 費用が少ない → 利益が多く出る |
| 3%と見積もる | 6.8億円 | — |
| 8%と見積もる | 18.2億円 | 費用が多い → 利益が減る |
同じ売掛金でも、見積もり次第で利益額が変わります。
ここに注意
引当金は見積もりです。そこに経営者の判断が入ります。
これが引当金の最も重要な性質です。
過去に不正会計が問題になった事例では、次のような形が見られました。
- 本来必要な引当金を積まない → 利益を多く見せる
- 業績の良い年に多めに積む → 悪い年に取り崩して利益を平準化する
後者は利益の平準化と呼ばれ、必ずしも違法ではありませんが、実態が見えにくくなります。
投資家として確認できることは限られますが、次の点は見られます。
1. 引当金の残高が、前の年と比べて大きく変わっていないか。
有価証券報告書に、引当金の増減が注記されています。急に減っている年は、取り崩して利益を作っていないかを確認してください。
2. 退職給付引当金の前提が変わっていないか。
退職給付の計算には、割引率という前提が使われます。この率を上げると、計上すべき金額は減ります。前提を変えるだけで利益が増えるということです。
変更した場合は有価証券報告書に明記されます。
3. 「引当金の戻入」で利益が出ていないか。
積んでいた引当金が不要になると、戻入(もどしいれ)として利益に計上されます。これは本業で稼いだ利益ではありません。
営業利益が横ばいなのに当期純利益だけ増えている年は、特別利益の中身を確認してください。
最後に、正しい理解のために一つ。
引当金を多く積む会社が悪いわけではありません。 むしろ保守的で誠実な姿勢の表れであることもあります。問題なのは、積むべきものを積んでいない場合です。
外部から完全に判断することはできません。しかし営業キャッシュフローは引当金の影響を受けにくいため、利益と営業CFを並べて見ることで、ある程度の見当はつきます。
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- 最終更新
- 2026-09-16