現引きと現渡し
信用取引の建玉を、反対売買ではなく現物で決済する方法。優待クロスで使われる。
ひとことで言うと
信用取引の建玉を、売り買いで相殺せず、現物のやり取りで終わらせる方法です。
もう少しくわしく
信用取引の建玉を終わらせる方法は、3つあります。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 反対売買 | 買い建なら売る、売り建なら買い戻す(最も一般的) |
| 現引き(げんびき) | 代金を全額払って、現物として受け取る |
| 現渡し(げんわたし) | 持っている現物を渡して、売り建を終わらせる |
現引きは「品受け(しなうけ)」、現渡しは「品渡し(しなわたし)」とも呼ばれます。
それぞれの使いどころです。
現引きを使う場面
信用で買った株を、そのまま長く持ちたくなったとき。
信用の建玉には期限(制度信用は6か月)と金利があります。代金を全額払って現物にすれば、期限も金利もなくなります。
現渡しを使う場面
空売りしている株と同じ銘柄の現物を持っているとき。現物を渡すことで、買い戻さずに済みます。
これが優待クロスの決済に使われます。
実際の数字で見る
現引きの例です。信用で100万円分を買っている状態から。
| 内容 | |
|---|---|
| 買い建玉 | 1,000株(100万円分) |
| 現引きに必要な資金 | 100万円(全額) |
| 現引き後 | 現物1,000株を保有 |
| それ以降の金利 | 0円 |
現引きには全額の現金が必要です。信用取引の利点(少ない資金で大きな取引ができる)を手放すことになります。
現渡しの例です。優待クロスの場合。
| 内容 | |
|---|---|
| 現物買い | 100株 |
| 売り建玉 | 100株(同じ銘柄) |
| 権利確定日を通過 | 優待の権利を取得 |
| 現渡し | 現物を渡して売り建を解消 |
このとき、株価がいくらになっていても損益はゼロです。買いと売りが同数あるためです。
ここに注意
現渡しを使わずに反対売買で決済すると、余計な費用がかかることがあります。
優待クロスで反対売買(現物を売り、売り建を買い戻す)をすると、次が発生します。
- 現物の売却手数料
- 売り建の買い戻し手数料
- 買い戻す値段と、現物を売る値段のわずかなずれ
現渡しなら、1回の手続きで両方が消えます。 手数料も抑えられます。
もう3つ、注意すべき点があります。
1. 現引きには受渡日のずれがあります。
現引きを申し込んでから、実際に現物になるまで数営業日かかります。その日のうちに売れるわけではありません。
2. 一般信用と制度信用で扱いが違うことがあります。
証券会社によっては、一般信用の建玉に現引き・現渡しを認めていない場合があります。使う前に確認してください。
3. 現引きすると、税金の計算の起点が変わります。
現引きした株の取得価格は、建玉を作ったときの値段になります。その後に売れば、その差額が課税対象です。
そして最も重要な点です。
現引きは「損を先送りする手段」として使われることがあります。
信用で買った株が下がり、期限が迫った。損を確定させたくないので現引きして現物にする。期限がなくなるので、いつまでも持てます。
しかしこれは、塩漬けにしているだけです。しかも全額を払っているため、拘束される資金は増えています。
信用の期限は、判断を迫られる機会でもあります。それを回避するために現引きするなら、判断を先送りしているだけだと理解してください。
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- 最終更新
- 2026-09-16