ベータ(β)
市場全体が動いたとき、その銘柄が何倍動くか。個別の事情は測っていない。
ひとことで言うと
市場全体が1%動いたときに、その銘柄が何%動くかを表す数字です。
もう少しくわしく
株価が動く理由は、大きく2つに分かれます。
| 理由 | 例 |
|---|---|
| 市場全体が動いた | 世界的な株安、金利の変化 |
| その会社の事情 | 決算、新製品、不祥事 |
ベータは、このうち1つ目のぶんだけを測ります。
| ベータ | 意味 |
|---|---|
| 1.0 | 市場と同じだけ動く |
| 1.6 | 市場の1.6倍動く。上げも下げも大きい |
| 0.5 | 市場の半分しか動かない |
| 0に近い | 市場と関係なく動く |
| マイナス | 市場と逆に動く。まれ |
計算は、日々の変化率から出します。
ベータ =(その銘柄と市場の変化率の共分散)÷(市場の変化率の分散)
難しく見えますが、やっていることは「市場が動いたとき、この銘柄は何倍動いていたか」を過去の値から測るだけです。
実際の数字で見る
市場全体が−10%動いた日を考えます。
| 銘柄 | ベータ | 予想される動き |
|---|---|---|
| A社 | 1.6 | −16% |
| B社 | 1.0 | −10% |
| C社 | 0.5 | −5% |
100万円ぶん持っていた場合の損は、こうなります。
| 銘柄 | 損 |
|---|---|
| A社(ベータ1.6) | −16万円 |
| B社(ベータ1.0) | −10万円 |
| C社(ベータ0.5) | −5万円 |
上げた日も同じ比率です。市場が+10%なら、A社は+16%です。
業種によって、ベータの傾向が違います。
| 業種の性格 | ベータの傾向 |
|---|---|
| 景気に左右される(機械・海運・証券) | 大きくなりやすい |
| 生活に必要なもの(食品・医薬・電力・鉄道) | 小さくなりやすい |
不景気でも人は食事をし、薬を飲みます。売上が景気に左右されにくい業種は、株価の動きも穏やかになりやすいのです。
ここに注意
ベータは過去の値から計算した数字です。これからもそうなるとはかぎりません。
これが最大の弱点です。ベータは過去1年や3年の値動きから計算します。
会社が変われば、ベータも変わります。
| 起きたこと | ベータへの影響 |
|---|---|
| 借金を大きく増やした | 大きくなる方向 |
| 事業を景気に左右されない分野に移した | 小さくなる方向 |
| 大型の買収をした | 変わる。過去の数字は使えない |
もう4つ、知っておいてください。
1. 計算する期間と市場の取り方で、値が変わります。
同じ銘柄でも、日次で1年ぶんと週次で5年ぶんでは違う値が出ます。市場を日経平均にするかTOPIXにするかでも変わります。
「この銘柄のベータは1.6だ」という言い方は、条件を書かないと意味がありません。
2. 会社固有の危なさは、まったく測っていません。
ベータが小さいということは、市場と一緒に動きにくいという意味でしかありません。
その会社が不正会計で上場廃止になる危険は、ベータには表れません。市場全体とは関係なく起きることだからです。
| 測れるもの | 測れないもの |
|---|---|
| 市場と一緒に動く幅 | その会社が倒れる危険 |
| — | 決算が崩れる危険 |
| — | 不正や事故 |
ベータが低い=安全、ではありません。
3. ベータが低くても、下げるときは下げます。
ベータ0.5は「市場が10%下げたら5%下げる」という意味であって、下げないという意味ではありません。
そして、市場が急落する場面では、多くの銘柄のベータが1に近づくことが知られています。売られるときは、みな一緒に売られるためです。
いちばん守ってほしい場面で、いちばん効かなくなります。
4. ベータを下げる方法は、株の中にはありません。
株だけを組み合わせても、市場全体の動きからは逃げられません。ベータを本当に下げたいなら、株以外を持つことになります。
| 持つもの | 市場の動きとの関係 |
|---|---|
| 株 | 市場と一緒に動く |
| 現金 | 動かない |
| 債券 | 株とは別の動き方をする |
これがアセットアロケーションの話です。ベータの調整は、銘柄選びよりも資産の配分で行うほうが確実です。
そのうえで、この数字の使い方を書いておきます。
個人にとってベータは、銘柄を選ぶ数字ではなく、自分の持ち方を確かめる数字です。
持っている銘柄がすべて景気に左右される業種なら、市場が下げたときにまとめて大きく下げます。
これは相関の話でもあります。10銘柄に分けても、全部ベータ1.5なら、分散したことになっていません。
| 確かめること | 意味 |
|---|---|
| 持っている銘柄の業種が偏っていないか | 一緒に下げないか |
| 下げたときの幅に耐えられるか | リスク許容度の問題 |
「この銘柄はベータが低いから買う」ではなく、「自分の持ち方が、市場の動きに対して傾きすぎていないか」を見るために使ってください。
関連する言葉
- 相関(そうかん) 2つの銘柄が同じ方向に動く度合い。これを見ないと、分散したつもりで分散にならない。
- 分散投資 複数の銘柄に分けて投資すること。1社の失敗で資産の大半を失う事態を防ぐ。
- アセットアロケーション 株・債券・現金などへの配分。銘柄選びより先に決めるべきもの。
- シャープレシオ 上下の大きさに対して、どれだけ増えたかの割合。同じ平均でも増え方は違う。
- 株主資本コスト 株主が最低限求めるリターン。ROEがこれを下回ると、稼いでいても価値を削っている。
- 最終更新
- 2026-09-18