リスク許容度
どれだけ減っても生活と判断が壊れないか。金額ではなく、耐えられるかで決まる。
ひとことで言うと
資産がどれだけ減っても、生活と判断を保っていられるかの限界です。
もう少しくわしく
投資では「リスクを取る」という言い方をします。リスク許容度は、自分がどこまで取れるかを表します。
これは、気持ちの強さの話ではありません。 2つの面から決まります。
| 面 | 中身 |
|---|---|
| お金の面 | 減っても生活が回るか |
| 気持ちの面 | 減っても判断を保てるか |
低いほうが、その人の限界です。
お金に余裕があっても、30%減った画面を見て眠れなくなり、底で投げ売りしてしまうなら、その人のリスク許容度は30%より低いのです。
逆に、気持ちが強くても、来年の学費を株に入れていれば、下げたときに売らざるをえません。
実際の数字で見る
お金の面から確かめます。同じ「300万円を投資に回した人」を2人並べます。
| Xさん | Yさん | |
|---|---|---|
| 年収 | 500万円 | 500万円 |
| 生活費とは別の貯金 | 600万円 | 50万円 |
| 投資額 | 300万円 | 300万円 |
| 3年以内に使う予定 | なし | 住宅の頭金 |
投資額は同じ300万円です。 しかし意味がまったく違います。
株価が40%下げた場面を考えます。
| 評価額 | その後どうなるか | |
|---|---|---|
| Xさん | 180万円 | 貯金があるので、戻るまで待てる |
| Yさん | 180万円 | 頭金に足りない。売るしかない |
Yさんは、最も安い場面で売ることになります。
どれだけ会社の中身が良くても、待てなければ損が確定します。
次に、気持ちの面を数字で確かめる方法を書きます。
「いくら減ったら、夜眠れなくなるか」を金額で書き出してください。
| 減った額 | 自分の反応 |
|---|---|
| −10万円 | 気にならない |
| −50万円 | 落ち着かない |
| −100万円 | 売りたくなる |
「売りたくなる」と書いた額が、その人の限界です。
投資額は、そこから逆算します。40%下げても限界を超えない額にしておけば、下げた場面でも判断を保てます。
| 限界 | 40%下げに耐えられる投資額 |
|---|---|
| −50万円 | 125万円 |
| −100万円 | 250万円 |
| −200万円 | 500万円 |
先に投資額を決めて、後から耐えようとするのが逆です。
ここに注意
上げ相場では、自分のリスク許容度を高く見積もります。
これがいちばん危ない点です。
資産が増えているとき、人は「40%下げても大丈夫」と思います。しかし、実際に40%下げた場面では、同じようには考えられません。
理由は2つあります。
| 上げ相場での想像 | 実際の下げ相場 |
|---|---|
| 下げるのは1回だけ | 何か月も下げ続ける |
| 周りは冷静 | 周りも売っている。報道も悲観的 |
下げは、一瞬では終わりません。 毎日少しずつ減っていく状態が、半年続くことがあります。
そして、下げているあいだは「まだ下がる」という話しか耳に入りません。 その中で持ち続けるのは、想像よりずっと難しいのです。
もう4つ、知っておいてください。
1. 年齢だけで決まりません。
「若いからリスクを取れる」とよく言われます。働いて稼げる年数が長いからという理由です。
しかしそれは、収入が安定している場合の話です。収入が不安定なら、若くても許容度は低くなります。
| 見るもの | なぜ |
|---|---|
| 年齢 | 取り戻せる年数 |
| 収入の安定 | 減っても入ってくるか |
| 生活費とは別の貯金 | 売らずに済むか |
| 使う予定 | いつ現金が必要か |
4つを合わせて考えてください。
2. 生活費は投資に回さないでください。
最低でも半年から1年ぶんの生活費は、現金で持っておくことが広く勧められます。
これがあると、下げている最中に売らずに済みます。 リスク許容度を上げる最も確実な方法は、待てる状態を作ることです。
3. 信用取引は許容度を超えさせます。
現物なら、損の上限は投じた額までです。
信用取引では、元手を超えて請求されることがあります。「40%下げても耐えられる」と決めていても、その決めた枠の外に出てしまいます。
自分で決めた限界を、仕組みのほうが破ってきます。
4. 一度決めても、事情が変われば変わります。
結婚、子どもの進学、転職、病気。生活が変われば、許容度も変わります。
年に一度は見直してください。 見直すときは、資産配分(アセットアロケーション)も一緒に確かめます。
そのうえで、実行の手順を書いておきます。
投資額は、リスク許容度から逆算して決めてください。順番が逆になりがちです。
| 正しい順番 | すること |
|---|---|
| 1 | 生活費の半年〜1年ぶんを現金で確保する |
| 2 | 3年以内に使うお金を除ける |
| 3 | 残りのうち、いくら減っても判断を保てるかを決める |
| 4 | そこから投資額を逆算する |
| 5 | 銘柄や商品を選ぶ |
多くの人は5から始めます。 良さそうな銘柄を見つけて、いくら買うかをその場で決めます。
買う量を先に決めておけば、下げた場面で慌てずに済みます。 これがポジションサイズの考え方です。
リスク許容度は、相場を読む力とは関係ありません。 自分の生活と性格から決まるものです。だから、相場を見る前に決められます。
関連する言葉
- アセットアロケーション 株・債券・現金などへの配分。銘柄選びより先に決めるべきもの。
- ポジションサイズ 1回の取引にいくら投じるかの決め方。銘柄選びより結果を左右する。
- 分散投資 複数の銘柄に分けて投資すること。1社の失敗で資産の大半を失う事態を防ぐ。
- 狼狽売り(ろうばいうり) 株価の急落に慌てて、冷静な判断をせずに売ってしまうこと。
- 命金には手をつけるな 生活に必要なお金で投資するなという教え。判断を狂わせるのは金額ではなく性質。
- 最終更新
- 2026-09-18