命金には手をつけるな
生活に必要なお金で投資するなという教え。判断を狂わせるのは金額ではなく性質。
ひとことで言うと
生活に必要なお金で株を買ってはいけない、という教えです。
もう少しくわしく
命金とは、それがなければ生きていけないお金のことです。
- 今月の家賃
- 子どもの学費
- 病気になったときの備え
- 失業したときの生活費
これらで投資をするな、という話です。当たり前に聞こえます。しかし、この教えの本当の意味は別のところにあります。
命金で投資すると、正しい判断ができなくなる。
問題は、損をすることではありません。判断が狂うことです。
同じ株を、同じ値段で持っていても、そのお金の性質によって行動が変わります。
| 余裕資金で持っている | 命金で持っている | |
|---|---|---|
| 20%下げた | 理由を調べる | 眠れなくなる |
| 判断 | 持つか売るかを決める | とにかく戻ってほしい |
| 戻ったら | 保有理由を確かめる | すぐ売ってしまう |
| さらに下げたら | 損切りできる | 売れない。損が確定するから |
命金で持つと、損切りができなくなります。 損を確定させると、来月の生活が成り立たないからです。
だから「戻るまで待つ」しかなくなります。そして戻らなければ、塩漬けになります。
実際の数字で見る
金額の大きさではなく、性質が問題だと分かる例を見ます。
Aさん … 資産1,000万円のうち、100万円を株に入れている。
Bさん … 資産100万円のうち、100万円を株に入れている。
どちらも同じ100万円です。株価が30%下げたとします。
| Aさん | Bさん | |
|---|---|---|
| 損失 | −30万円 | −30万円 |
| 残りの資産 | 970万円 | 70万円 |
| 生活への影響 | なし | 来月が苦しい |
| とれる行動 | 待つ/売る/買い増す | 売るしかない |
損失額は同じです。 しかしAさんには選択肢があり、Bさんにはありません。
そして、市場はBさんのような人が売らざるを得ない場面で、いちばん安くなります。
最も安いところで売らされるのは、余裕のない人です。
これは能力や知識の問題ではありません。構造の問題です。
ここに注意
「余裕資金」の定義を、自分に都合よく決めないでください。
多くの人が、こう考えます。
「すぐには使わないから、余裕資金だ」
これは危険です。判断の基準は「いつ使うか」だけではありません。
確かめる問いは3つあります。
1. 半分になっても、生活は変わらないか。
30%ではなく半分で考えてください。株式相場は、過去に何度も半分になっています。
2. 5年間戻らなくても、困らないか。
下げてから戻るまで、10年以上かかったこともあります。使う予定が5年以内にあるなら、それは余裕資金ではありません。
3. 収入が止まっても、持ち続けられるか。
失業や病気で収入が止まったとき、その株を売らずにいられるか。売らざるを得ないなら、その時期は相場も悪い可能性があります。
そのうえで、実際の手順を書いておきます。
投資を始める前に、生活費の半年から1年分を現金で確保してください。
これを生活防衛資金といいます。投資のお金とは、はっきり分けます。
| 用途 | 置き場所 |
|---|---|
| 生活防衛資金 | 普通預金(すぐ引き出せる) |
| 5年以内に使う予定のお金 | 預金 |
| 当面使わないお金 | ここではじめて投資を考える |
「効率が悪い」と感じるかもしれません。預金の金利はごくわずかです。
しかし、この現金があるかどうかで、下げたときにとれる行動が変わります。 現金を持っている人は待てます。持っていない人は売らされます。
最後に、この教えのいちばん大事な点を書いておきます。
相場から退場する人の多くは、判断を間違えたのではなく、待てなかった人です。
正しい銘柄を選んでいても、下げた時期に売らざるを得なければ、結果は同じです。何を買うかより先に、いくらまでなら入れてよいかを決めてください。
関連する言葉
- 退場(たいじょう) 資金を失い、株式投資そのものから撤退すること。
- ポジションサイズ 1回の取引にいくら投じるかの決め方。銘柄選びより結果を左右する。
- アセットアロケーション 株・債券・現金などへの配分。銘柄選びより先に決めるべきもの。
- 損切り(ロスカット) 損が出ている株を売って、損失を確定させること。傷が広がる前に止める行為。
- 追証(おいしょう) 信用取引で損が膨らみ担保が不足したとき、証券会社から追加の入金を求められること。
- 最終更新
- 2026-09-17