二度に買うべし二度に売るべし
一度にやるなという江戸期からの格言。ナンピンと違うのは、買う前に決めている点。
ひとことで言うと
買うときも売るときも、一度にまとめてやらず、2回に分けよという格言です。
もう少しくわしく
江戸時代から伝わる相場格言です。本間宗久の言葉として紹介されることが多いのですが、出典ははっきりしません。
言っていることは単純です。
一度に決めるな。半分ずつにしろ。
なぜ2回なのか。いちばん良い値段が分からないからです。
一度に買えば、その値段がそのまま自分の買値になります。そこが天井だった場合、打つ手がありません。
2回に分ければ、1回目の後にまだ半分の資金が残っています。下がれば安く買い足せますし、判断が変わったなら買わないという選択もできます。
売るときも同じです。全部売った後に上がれば、取り逃したままです。半分残しておけば、上げに付き合えます。
図のとおり、分ければ必ず得になるわけではありません。 その後上がっていく相場では、分けたほうが高くつきます。
この格言が守っているのは、得することではなく、大外しを避けることです。
実際の数字で見る
300株を買う場面で、2つのやり方を比べます。株価は1,000円から下げていったとします。
| 一度に買う | 二度に分ける | |
|---|---|---|
| 1回目 | 1,000円で300株 | 1,000円で150株 |
| 2回目 | — | 800円で150株 |
| 平均の買値 | 1,000円 | 900円 |
| 投じた額 | 300,000円 | 270,000円 |
株価が700円まで下げた時点での含み損を出します。
| 評価額 | 含み損 | |
|---|---|---|
| 一度に買った人 | 210,000円 | −90,000円(−30.0%) |
| 二度に分けた人 | 210,000円 | −60,000円(−22.2%) |
同じ300株を持っていて、含み損が3万円違います。
今度は、株価が1,200円まで上がった場合です。
| 1回目 | 2回目 | 平均の買値 | 評価額 | 損益 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 一度に買った人 | 1,000円で300株 | — | 1,000円 | 360,000円 | +60,000円 |
| 二度に分けた人 | 1,000円で150株 | 1,100円で150株 | 1,050円 | 360,000円 | +45,000円 |
上がった場合は、分けたほうが15,000円少なくなります。
| 相場 | 分けた結果 |
|---|---|
| 下げた | 損が小さくなる |
| 上がった | 利益が小さくなる |
両方の幅が縮みます。 これがこの格言の中身です。
ここに注意
ナンピンと似ていますが、違います。違いは「いつ決めたか」です。
下がってから買い足す。動作は同じです。しかし中身がまったく違います。
| 二度に買う | ナンピン | |
|---|---|---|
| 買う量を決めた時期 | 買う前 | 下がった後 |
| 2回目の資金 | 最初から取ってある | その場で追加する |
| 全体の量 | 最初に決めた量のまま | 予定より増える |
| やめる線 | 決めてある | 決まっていないことが多い |
いちばん大きな違いは、全体の量が増えるかどうかです。
二度に買う場合、300株買うと決めて、150株ずつ入れます。 最後まで300株です。
ナンピンでは、300株買った後に下がったので、さらに300株買います。 600株になります。
| 最終的な株数 | 投じた額 | 700円での含み損 | |
|---|---|---|---|
| 二度に買う | 300株 | 270,000円 | −60,000円 |
| ナンピン | 600株(1,000円で300株+800円で300株) | 540,000円 | −120,000円 |
同じ「下がったから買った」でも、損の大きさが2倍違います。
格言が「二度に」と回数を限っているのは、際限なく買い足すことを防ぐためでもあります。
もう3つ、知っておいてください。
1. 「二度」に根拠はありません。
3回でも5回でもかまいません。一度にやらないというのが要点です。
ただし、回数を増やすほど1回あたりの額が小さくなり、手数料の比率が上がります。 手数料が1回あたり定額の証券会社では、分けるほど不利になります。
2. 売るときのほうが守りにくい格言です。
上がった株を半分だけ売るのは、心理的に難しいことが知られています。
| 起きること | よくある行動 |
|---|---|
| 上がってきた | 「まだ上がる」と全部持つ |
| 下げ始めた | 「戻る」と全部持つ |
| さらに下げた | 全部売る |
結局、一度に全部やっています。
半分売っておけば、その後どちらに動いても「半分は正解」です。全部売るか全部持つかを選ぶから、全部外れることになります。
3. 1回目の時点で、2回目の条件を決めてください。
決めておくべきことは2つです。
| 決めること | 例 |
|---|---|
| いくらになったら2回目を入れるか | 1割下げたら |
| いつまでに入らなければやめるか | 3か月以内に来なければ見送る |
期限がないと、下がるのを待ち続けて、結局買わないことになります。あるいは、下がり続けている株に、決めていない買い足しをすることになります。
そのうえで、この格言を実行するための順番を書いておきます。
買いたい量を先に決めてください。分けるのは、その後です。
| 順番 | すること |
|---|---|
| 1 | この銘柄にいくらまで入れるかを決める(ポジションサイズ) |
| 2 | それを2回に割る |
| 3 | 2回目の条件と期限を決める |
| 4 | 1回目を買う |
| 5 | 決めた条件どおりに2回目を入れる。または見送る |
1を飛ばすと、ナンピンになります。 「とりあえず買って、下がったら考える」が、そのままナンピンの入口です。
関連する言葉
- 分割売買(買い下がり・売り上がり) 一度に売買せず、何回かに分けること。ナンピンと違い、買う前に計画を決めておく。
- ナンピン(難平) 買った株が下がったとき、さらに買い増して平均の取得価格を下げる手法。初心者が資産を失う最大の原因でもある。
- ポジションサイズ 1回の取引にいくら投じるかの決め方。銘柄選びより結果を左右する。
- ドルコスト平均法 毎月同じ金額を買い続ける方法。買う時期を分散し、高値で一度に買う失敗を防ぐ。
- 株を買うより時を買え 銘柄選びより買う時期のほうが効く、という格言。ただし時を当てるほうが難しい。
- 最終更新
- 2026-09-18