株を買うより時を買え
銘柄選びより買う時期のほうが効く、という格言。ただし時を当てるほうが難しい。
ひとことで言うと
どの株を買うかより、いつ買うかのほうが結果を左右する、という格言です。
もう少しくわしく
「良い銘柄を選べば儲かる」と考えるのが自然です。この格言は、それに待ったをかけます。
銘柄が良くても、買う時期を誤れば損をする。
なぜそうなるのか。市場全体が下げるとき、ほとんどの銘柄がそろって下げるからです。
業績が伸びている会社も、財務の固い会社も、市場全体の下げには巻き込まれます。 会社の良し悪しでは避けられません。
この格言は、個別の銘柄選びだけを見ていると、より大きな要因を見落とすと言っています。
実際の数字で見る
同じ銘柄を、違う時期に買った場合を並べます。
A社の株価が、1年かけてこう動いたとします。
| 時期 | 株価 |
|---|---|
| 1月 | 1,000円 |
| 6月(高値) | 1,500円 |
| 12月 | 1,300円 |
2人が同じA社を買いました。
| 買った時期 | 買値 | 12月時点 | 損益 | |
|---|---|---|---|---|
| Xさん | 1月 | 1,000円 | 1,300円 | +30.0% |
| Yさん | 6月 | 1,500円 | 1,300円 | −13.3% |
同じ会社、同じ期間の終わりで、43ポイントの差がついています。
差を生んだのは銘柄選びではありません。買った時期だけです。
次に、同じ時期に違う銘柄を買った場合と比べます。
| 買った時期 | 1年後の損益 | |
|---|---|---|
| A社を1月に買った | 1月 | +30.0% |
| B社を1月に買った | 1月 | +22.0% |
| 差 | — | 8ポイント |
| 差 | |
|---|---|
| 買う時期を変えた差 | 43ポイント |
| 銘柄を変えた差 | 8ポイント |
この例では、時期の差のほうが5倍以上大きいという結果になりました。
格言が言っているのは、こういうことが起こりうるということです。
ここに注意
「だから時を当てよう」と読むと、逆に損をします。
ここがこの格言のいちばん厄介なところです。
格言は「時のほうが効く」と言っています。しかし「時を当てられる」とは一言も言っていません。
そして実際には、時を当てるほうが、銘柄を選ぶより難しいのです。
| やること | 難しさ |
|---|---|
| 銘柄を選ぶ | 決算書を読めば、材料はそろう |
| 時期を当てる | 材料がない。未来の相場は誰にも分からない |
決算書は過去の事実です。読めば分かります。
「いまが安いか」は事実ではありません。 分かるのは後からです。
そのため、この格言をそのまま実行しようとすると、次のどれかになります。
| 起きること | 結果 |
|---|---|
| もっと安くなるのを待ち続ける | 押し目待ちに押し目なし。買えないまま上がる |
| 「いまが底だ」と判断して買う | もうはまだなり。さらに下げる |
| 高値で「まだ上がる」と判断して買う | 高値づかみ |
時を当てようとした結果、時を外すのです。
では、どうすればよいか。当てないで済ませる方法があります。
買う時期を1点に決めず、分けてください。
分けて買えば、高値でも安値でも、その平均に近いところで買えます。
| やり方 | いちばん良い結果 | いちばん悪い結果 |
|---|---|---|
| 一度に買う | 底で買える | 天井で買える |
| 分けて買う | 平均より少し良い | 平均より少し悪い |
分けて買うことは、最高の結果を捨てて、最悪の結果を避けるやり方です。
上の図のとおり、その後上がっていく相場では、分けたほうが高くつきます。 分割は万能ではありません。外れの幅を小さくするための方法です。
もう3つ、知っておいてください。
1. 「時」は、相場の時とはかぎりません。
この格言の「時」を、自分の人生の時期と読むこともできます。
| 自分の状況 | 株に向いているか |
|---|---|
| 生活費に余裕があり、数年使わないお金がある | 向いている |
| 近く大きな支出がある | 向いていない |
| 収入が不安定な時期 | 向いていない |
相場の底で買えても、半年後に売らざるをえない事情があれば、意味がありません。
待てる状態にあるかどうかも、「時」のうちです。
2. 市場全体の水準は、確かめられます。
いつが底かは分かりませんが、いまが過去と比べてどのあたりかは数字で見られます。
| 見るもの | 何が分かるか |
|---|---|
| 指数のPER・PBR | 市場全体が過去と比べて高いか安いか |
| 個別銘柄のPER・PBR | その会社の過去と比べてどうか |
当てるためではなく、いまの位置を知るために使ってください。高い位置にいると分かれば、一度に全部買わないという判断ができます。
3. 長く持つほど、時期の影響は薄れます。
上の例の43ポイントの差は、1年で見た場合です。
10年、20年と持てば、買った時期の差は、業績の伸びに埋もれていきます。 業績が伸び続ける会社なら、です。
時期が効くのは短い期間ほどであり、中身が効くのは長い期間ほどです。
そのうえで、この格言の実用的な読み方を書いておきます。
「時を当てよ」ではなく、「時に賭けるな」と読んでください。
同じ格言から、2つの行動が出てきます。
| 読み方 | 行動 |
|---|---|
| 時を当てよう | 一度に全部入れる。当たれば大きい |
| 時に賭けまい | 分けて買う。外れても小さい |
当てられない前提に立つなら、後者しかありません。
そして、当てられない前提に立つことは、悲観ではありません。誰にも当てられないという事実に合わせているだけです。
関連する言葉
- ドルコスト平均法 毎月同じ金額を買い続ける方法。買う時期を分散し、高値で一度に買う失敗を防ぐ。
- 分割売買(買い下がり・売り上がり) 一度に売買せず、何回かに分けること。ナンピンと違い、買う前に計画を決めておく。
- 押し目待ちに押し目なし 下がったら買おうと待っているうちに、一度も下がらず上がっていくこと。待つことも損になる。
- 休むも相場 売買しないことも立派な判断だという格言。動かないでいられることが、続ける条件になる。
- もうはまだなり、まだはもうなり 「もう底だ」と思ったときはまだ下がり、「まだ下がる」と思ったときには底を打っている。
- 最終更新
- 2026-09-18