公募増資と第三者割当増資
新しく株を発行して資金を集める方法。1株あたりの取り分が薄まる。
ひとことで言うと
会社が新しく株を発行してお金を集める方法で、割り当てる相手が違います。
もう少しくわしく
会社がお金を集める方法は、大きく2つです。
| 方法 | 中身 |
|---|---|
| 借りる | 返す義務がある。利息がかかる |
| 株を発行する | 返す義務がない。その代わり取り分が減る |
後者が増資です。そして、誰に割り当てるかで名前が変わります。
| 名前 | 割り当てる相手 |
|---|---|
| 公募増資 | 広く一般の投資家 |
| 第三者割当増資 | 特定の相手(提携先、支援者など) |
| 株主割当増資 | 既存の株主 |
どの方法でも、発行済株式数が増えます。 そして、既存の株主にとって同じことが起きます。
1株あたりの取り分が減ります。
これを希薄化(きはくか、ダイリューション)といいます。
実際の数字で見る
発行済株式1,000万株、利益10億円の会社を考えます。
| 株数 | EPS | 変化 | |
|---|---|---|---|
| 増資前 | 1,000万株 | 100円 | — |
| +200万株 | 1,200万株 | 83.3円 | −16.7% |
| +300万株 | 1,300万株 | 76.9円 | −23.1% |
利益は10億円のまま、1円も減っていません。 分ける相手が増えただけです。
株価が変わらなければ、PERは上がります。同じ利益に対して、株価が割高になったことになります。
だから増資が発表されると、株価はたいてい下がります。
ただし、これで終わりではありません。集めたお金が何を生むかが問題です。
| 資金の使い道 | その後 |
|---|---|
| 新しい工場を建て、利益が増えた | 希薄化を上回れば、EPSは回復する |
| 買収に使い、利益が増えた | 同上 |
| 借金の返済に使った | 利息は減るが、利益は大きく増えない |
| 運転資金の穴埋め | 資金繰りが苦しかったということ |
上の例で、200万株の増資で集めた資金が2億円の利益増を生んだとします。
| 計算 | |
|---|---|
| 利益 | 10億円 → 12億円 |
| 株数 | 1,200万株 |
| EPS | 100円(元に戻る) |
元の水準に戻るまで、それだけの成果が必要ということです。しかも数年かかります。
ここに注意
第三者割当増資は、公募増資より注意が必要です。理由が3つあります。
1. 持株比率が下がります。
公募増資なら、既存の株主も応募できます。しかし第三者割当は、決まった相手にしか渡りません。
| 議決権の比率 | |
|---|---|
| 増資前に5%持っていた | 5% |
| 30%の新株が第三者に渡った | 3.8%に下がる |
発言力が薄まります。
2. 割当価格が市場価格より安いことがあります。
株価1,000円のときに、800円で第三者に割り当てる、といったことが起こり得ます。
割り当てを受けた側は、その時点で含み益を持ちます。既存株主の価値が、その分移転しています。
著しく有利な価格で発行する場合は、株主総会の特別決議が必要とされています。しかし「著しく」の判断には幅があります。
3. なぜその相手なのかを確かめてください。
| 相手 | 読み方 |
|---|---|
| 事業上の提携先 | 前向きな理由がある可能性 |
| 大手企業 | 資本提携。今後の関係を見る |
| 聞いたことのない投資会社 | 調べる必要がある |
とくに、業績が悪化している会社が、素性のはっきりしない相手に大量の新株を発行する場合は、慎重に見てください。
確かめる資料があります。
適時開示の「第三者割当増資に関するお知らせ」です。
ここに、割当先、割当価格、資金の使途、なぜその相手なのかが書かれています。会社は説明する義務があります。
説明が具体的か、決まり文句かを読んでください。
もう2つ、知っておいてください。
1. 増資には他の形もあります。
新株予約権(ワラント)を使った資金調達もあります。「MSワラント」と呼ばれる形は、株価に応じて発行価格が変わるため、株価が下がるほど発行株数が増えます。希薄化が読みにくく、注意が必要です。
2. 株式分割とは別のものです。
| 中身 | |
|---|---|
| 増資 | 新しくお金が入る。希薄化する |
| 株式分割 | お金は入らない。1株を分けるだけ |
株式分割では、株数が2倍になってもEPSは半分になり、理論上の価値は変わりません。 増資とは性質がまったく違います。
関連する言葉
- 増資 会社が新しく株を発行してお金を集めること。1株あたりの価値が薄まるため、株価が下がりやすい。
- EPS(1株あたり利益) 会社の利益を株の数で割った数字。株1つが1年でいくら稼いだかを表す。
- ストックオプション 決められた値段で自社株を買える権利。行使されると株数が増え、1株の価値が薄まる。
- 株式分割 1株を複数に分けて株数を増やすこと。株価は下がるが、持っている価値の合計は変わらない。
- 議決権 株主総会で投票できる権利。原則として1単元につき1個で、単元未満株には付かない。
- 最終更新
- 2026-09-17