一文惜しみの百知らず
わずかな金額を惜しんで大きな機会を逃すこと。指値へのこだわりで起きる。
ひとことで言うと
わずかなお金を惜しんで、大きな利益を取り逃すことです。
もう少しくわしく
一文は、江戸時代のいちばん小さな貨幣です。百は百文、つまり大きな金額を指します。
一文を惜しんだために、百文を失うことに気づかない。
株の世界では、次のような場面で使われます。
| 場面 | 惜しんだもの |
|---|---|
| 指値にこだわって買えなかった | 1円、2円 |
| 手数料の安い証券会社を探して時間を使った | 数百円 |
| 優待の権利日を狙って高値で買った | 優待の価値以上 |
いちばん多いのは1つ目です。
「1,000円になったら買おう」と決めて注文を出す。しかし株価は1,001円までしか下がらず、そこから上げていく。
1円のために、その銘柄をまるごと逃します。
実際の数字で見る
100株買う前提で計算します。
| 金額 | |
|---|---|
| 1,000円で100株 | 100,000円 |
| 1,001円で100株 | 100,100円 |
| 惜しんだ額 | 100円 |
100円をケチったことになります。
その後、株価が1,300円になりました。
| 金額 | |
|---|---|
| 1,001円で買っていれば | 129,900円 |
| 取り逃した利益 | 29,900円 |
100円を惜しんで、29,900円を逃しました。299倍です。
この比率は、株価が上がるほど大きくなります。1円の差は、買った瞬間にしか意味がありません。
逆の場合も見ておきます。買えなかった後、株価が800円まで下げたとします。
| 結果 | |
|---|---|
| 買えなかった | 20,000円の損失を避けられた |
買えなくて正解でした。 つまり、この格言は「いつも指値を諦めろ」という意味ではありません。
惜しむ金額と、逃す可能性のある金額の大きさが、まったく釣り合っていないことを言っています。
ここに注意
この格言を「成行で買え」と読むと、別の損をします。
1円を惜しむのは愚かですが、値段を見ずに買うのも愚かです。とくに板が薄い銘柄では、成行注文で数%高く買ってしまうことがあります。
正しい使い分けは、惜しむ金額の大きさで決めることです。
| 差 | 判断 |
|---|---|
| 株価の0.1%程度 | こだわらない |
| 1〜2% | 状況による |
| 5%以上 | 待つ意味がある |
1,000円の株で1円は0.1%です。ここにこだわる意味はありません。
一方、1,000円の株を950円で買いたいなら、それは5%です。待つ理由があります。
もう2つ、実際的な注意があります。
1. 「押し目待ちに押し目なし」と同じ構造です。
安く買おうとして待つこと自体は正しい判断です。しかし待つ水準が細かすぎると、永遠に買えません。
決めるべきは「いくらまでなら払えるか」であって、「1円でも安く」ではありません。
2. 売るときにも同じことが起きます。
「1,300円になったら売る」と決めていて、1,298円で止まって下げ始めた。そこで売れずに、1,000円まで戻ってしまう。
2円のこだわりで、300円を失います。
そして、この格言が本当に指しているのは、金額ではなく考え方です。
細かい数字にこだわると、大きな判断ができなくなります。
手数料を1円単位で比べるのに、その銘柄を持つべきかどうかは30分も考えていない。 これは順番が逆です。
投資で結果を左右するのは、次の順です。
| 影響の大きさ | 項目 |
|---|---|
| とても大きい | いくら投じるか(ポジションサイズ) |
| 大きい | 何を買うか |
| 中くらい | いつ買うか |
| 小さい | 1円の差、手数料の差 |
いちばん下に時間をかけ、いちばん上を考えていない。 それが「百を知らず」の中身です。
関連する言葉
- 指値と成行 値段を決めて注文するのが指値、値段を決めず今の値で買うのが成行。
- 押し目待ちに押し目なし 下がったら買おうと待っているうちに、一度も下がらず上がっていくこと。待つことも損になる。
- 手数料 売買のたびにかかる費用。回数が増えるほど積み上がり、利益を静かに削る。
- 呼値(よびね) 注文を出せる値段のきざみ。株価の水準によって1円きざみ、5円きざみと変わる。
- 利確(利益確定) 含み益が出ている株を売って、利益を現実のものにすること。売るまで利益は存在しない。
- 最終更新
- 2026-09-17