セル・イン・メイ
「5月に売れ」という欧米の格言。日本の相場に当てはまる保証はない。
ひとことで言うと
「5月に売って、秋まで市場から離れていろ」という欧米の相場格言です。
もう少しくわしく
元の言い回しは長いものです。
Sell in May and go away, and come back on St. Leger Day. (5月に売って離れ、セント・レジャー・デーに戻ってこい)
セント・レジャー・デーは、イギリスで9月中旬に行われる競馬の伝統レースの日です。
由来には、19世紀のイギリスの生活習慣があると言われます。夏の間、ロンドンの富裕層は田舎の別荘へ避暑に出かけ、秋の競馬シーズンに戻ってきたという話です。
つまり参加者が減るから市場が動かない、という当時の事情に根ざした言葉です。
実際の数字で見る
この格言は、期間と市場によってまったく違う結果になります。
一般に語られる傾向は次のとおりです。
| 期間 | 傾向とされるもの |
|---|---|
| 11月〜4月 | 上昇しやすい |
| 5月〜10月 | 動きが乏しい、または下落 |
しかし、確認すべき点があります。
1. 元はイギリスと米国の話です。
日本の3月決算という区切りや、夏のボーナス、9月の中間決算といった事情は、イギリスの競馬シーズンとは無関係です。
2. 検証する期間で結果が変わります。
ある期間では有効に見え、別の期間では見えません。どの期間を選ぶかで結論が変わるという、アノマリー全般の問題がここにもあります。
3. 「売って離れる」間の機会損失があります。
半年間市場を離れれば、その間の配当も受け取れません。上昇した年には、丸ごと逃します。
ここに注意
この格言に従って毎年5月に売ると、税金と手数料が毎年かかります。
売却すれば、そのたびに利益に20.315%の税金がかかります。年1回の売買でも、10年で10回です。
長期で持ち続けていれば、その税金は売るまで払いません。 その間、税金分も含めた金額が運用に回ります。これを課税の繰り延べと言います。
| 毎年売買する | 持ち続ける | |
|---|---|---|
| 税金を払う回数 | 10回 | 1回(最後に売るとき) |
| 運用に回る額 | 税引後 | 税引前のまま |
長期になるほど、この差は開きます。
そして、より重要な点があります。
この格言が本当に言いたいのは「5月に売れ」ではないかもしれません。
続く言葉として「休むも相場」と同じ趣旨を読む人もいます。動きの乏しい時期に無理に売買するなという戒めです。
その読み方なら、実用的です。「5月に全部売る」ではなく、「動かない時期は新しく買わない」という形になります。
当サイトの立場を書いておきます。
当サイトは、季節による売買の判断をしていません。
分析に使っているのは、公表された財務データです。5月だから売る、11月だから買うという条件は入れていません。
理由は単純です。会社の業績は、暦の月では決まらないからです。
覚えておく価値はあります。5月頃に「セル・イン・メイ」という言葉をよく見かけるようになったとき、それが何を根拠にした話かを判断できるためです。
関連する言葉
- アノマリー 理屈では説明できないが、経験的に語られる値動きの傾向。再現する保証はない。
- 休むも相場 売買しないことも立派な判断だという格言。動かないでいられることが、続ける条件になる。
- 閑散に売りなし 売買が細って値動きが乏しいときは、売り込んでも下がりにくいという古い格言。
- もうはまだなり、まだはもうなり 「もう底だ」と思ったときはまだ下がり、「まだ下がる」と思ったときには底を打っている。
- 最終更新
- 2026-09-16