ライツオファリング
株主に新株予約権を無償で配る増資。何もしないと損をする、珍しい仕組み。
ひとことで言うと
株主に「新しい株を買う権利」を無料で配る増資のやり方です。
もう少しくわしく
増資にはいくつか方法があります。公募増資は広く募集し、第三者割当増資は特定の相手に割り当てます。
ライツオファリングは、いまの株主全員に新株予約権を無償で配ります。
| 配る相手 | 既存株主の持株比率 | |
|---|---|---|
| 公募増資 | 広く一般 | 下がる |
| 第三者割当 | 特定の相手 | 下がる |
| ライツオファリング | いまの株主全員 | 行使すれば保てる |
一見、既存株主に配慮した方法に見えます。実際、そういう面はあります。
しかし、大きな落とし穴があります。
何もしないと、損をします。
これは他の増資にはない性質です。公募増資では、株主は何もしなくてよいのです(希薄化は被りますが、手続きは不要です)。
ライツオファリングでは、株主に3つの選択肢があり、選ばないと自動的に3つ目になります。
| 選択 | すること |
|---|---|
| 権利を行使する | お金を払って新株を買う |
| 権利を売る | 市場で権利を売却する |
| 何もしない | 権利が消滅する |
実際の数字で見る
条件を決めます。
| 内容 | |
|---|---|
| 発行済株式 | 1,000万株 |
| 株価 | 1,000円 |
| 割当 | 1株につき0.2株分の権利 |
| 行使価格 | 800円 |
新株は200万株増えます。権利落ち後の理論株価はこうなります。
(1,000万株 × 1,000円 + 200万株 × 800円)÷ 1,200万株 = 966.67円
100株持っていた人(10万円分)が、それぞれの選択でどうなるか見ます。
| 選択 | 結果 | 元の10万円と比べて |
|---|---|---|
| 権利を行使する | 120株 = 116,000円 (16,000円払った) |
±0円 |
| 権利を売る | 100株 96,667円 +権利 3,333円 |
±0円 |
| 何もしない | 100株 = 96,667円 | −3,333円 |
行使しても売っても、価値は変わりません。 しかし何もしなければ、3.3%減ります。
減った分は、権利を行使した他の株主に移っています。
これが「何もしないと損をする」の中身です。
ここに注意
通知を見落とすと、それだけで損をします。
多くの場面では、何もしないことが最も安全です。しかしライツオファリングは違います。
| 届くもの | いつ |
|---|---|
| 適時開示での発表 | 決定時 |
| 証券会社からの通知 | 割当後 |
| 権利行使の期間の案内 | 期間の前 |
証券会社のメールや電子交付書面を見ていないと、気づかないまま期限が過ぎます。
そして、期限は決まっています。 過ぎれば権利は消滅します。
もう4つ、知っておいてください。
1. 2種類あります。
| 種類 | 中身 |
|---|---|
| コミットメント型 | 証券会社が引き受ける。資金が確実に集まる |
| ノンコミットメント型 | 引受先がない。集まらないこともある |
ノンコミットメント型は注意が必要です。資金が集まる保証がなく、資金調達に困っている会社が使うことがあります。
2. 日本ではあまり使われません。
欧州では一般的ですが、日本での実施例は多くありません。 手続きが煩雑で、期間も長くかかるためです。
そのぶん、初めて出会ったときに戸惑いやすい仕組みでもあります。
3. 権利には市場価格がつきます。
新株予約権は、取引所に上場されて売買できます。 理論価格は「権利落ち後の株価 − 行使価格」から計算できますが、実際の値段は需給で決まります。
理論価格より安くしか売れないこともあります。
4. 行使するにはお金が必要です。
上の例では16,000円が必要でした。持ち株が多ければ、その分だけ資金が要ります。
資金がなければ、権利を売るしかありません。 その場合、持株比率は下がります。
そして、最も大事な確認事項を書いておきます。
なぜ増資するのかを確かめてください。
適時開示に、資金の使途が書かれています。
| 使途 | 読み方 |
|---|---|
| 新しい設備・買収 | 前向きな理由 |
| 借入金の返済 | 財務の改善 |
| 運転資金 | 資金繰りが苦しい可能性 |
ノンコミットメント型で、使途が運転資金という組み合わせなら、慎重に見てください。増資に応じてさらにお金を入れるべきかは、別の判断です。
権利を行使するかどうかは、「その会社に追加でお金を入れたいか」という問いです。 損を避けるためだけなら、権利を売ればよいのです。
関連する言葉
- 増資 会社が新しく株を発行してお金を集めること。1株あたりの価値が薄まるため、株価が下がりやすい。
- 公募増資と第三者割当増資 新しく株を発行して資金を集める方法。1株あたりの取り分が薄まる。
- ストックオプション 決められた値段で自社株を買える権利。行使されると株数が増え、1株の価値が薄まる。
- 議決権 株主総会で投票できる権利。原則として1単元につき1個で、単元未満株には付かない。
- 適時開示 会社が重要な情報をその都度公表する制度。株価に影響する発表は、必ずここを通る。
- 最終更新
- 2026-09-18