従業員持株会
給料から天引きで自社株を買う制度。奨励金がつくが、給料と資産が同じ会社に集中する。
ひとことで言うと
給料からの天引きで、自分が勤める会社の株を毎月買っていく制度です。
もう少しくわしく
会社が用意する制度で、加入すると次のことが起きます。
- 毎月、決めた額が給料から天引きされる
- その資金で、自社株を自動的に買う
- 多くの場合、会社が奨励金を上乗せする
奨励金は、拠出額の5〜20%が一般的です。1万円拠出すれば、会社が500〜2,000円足してくれます。
利点は3つあります。
| 利点 | 内容 |
|---|---|
| 奨励金 | その分だけ確実に有利 |
| 少額から | 1,000円程度から始められる |
| 自動的に積み立てられる | ドルコスト平均法と同じ効果 |
とくに奨励金は大きいです。10%なら、買った瞬間に10%の利益が乗っている状態です。
実際の数字で見る
月1万円、奨励金10%で10年続けた場合。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 自分が出した額 | 120万円 |
| 奨励金 | 12万円 |
| 買付に使われた額 | 132万円 |
株価が変わらなくても、10%多く買えています。
しかし、ここに重大な問題があります。
ここに注意
給料と資産を、同じ1社に集中させることになります。
これがこの制度の最大の問題です。
勤めている会社が傾いたとき、何が起きるか。
| 同時に起きること | |
|---|---|
| 給料 | 減る、または失う |
| 賞与 | 出ない |
| 持株会の資産 | 同時に大きく減る |
| 退職金 | 減る可能性 |
最も助けが必要なときに、資産も同時に失います。
これは理論上の話ではありません。実際に、経営破綻した企業の従業員が職と資産を同時に失った例があります。海外では、大手企業の破綻で従業員の年金資産が自社株に集中していたために、老後の資金をまとめて失った事例が知られています。
卵を一つのかごに盛るなという格言の、最も具体的な形がこれです。
もう3つ、実務的な注意があります。
1. 売りたいときにすぐ売れない。
持株会の株は、通常証券口座に移してから売る必要があります。手続きに数日から数週間かかることがあります。急落時に間に合いません。
2. インサイダー取引の制約がある。
会社の重要情報を知る立場にいると、売買が制限される期間があります。決算発表前など、売りたくても売れない時期があります。
ただし持株会の定期的な買付そのものは、原則としてインサイダー規制の対象外です(継続的な計画に基づくため)。制限されるのは、引き出しや随意の売買です。
3. NISA口座では買えない。
持株会の買付は、NISAの対象外です。利益には通常どおり課税されます。
では、どうすればよいか。制度を使うな、という話ではありません。
現実的な使い方は次のとおりです。
| やること | 理由 |
|---|---|
| 奨励金の分だけは活用する | 確実に有利 |
| 拠出額を、資産全体の一部に抑える | 集中を避ける |
| 定期的に引き出して、別の資産に移す | 積み上がりすぎを防ぐ |
3つ目が特に重要です。10年続ければ、気づかないうちに資産の大半が自社株になっていることがあります。
年に1回、自分の資産のうち自社株が何%かを確認してください。20%を超えていたら、多すぎると考えるべきです。
関連する言葉
- 卵を一つのかごに盛るな 資産を1か所に集中させるなという格言。分散の必要性を1行で言い表している。
- 分散投資 複数の銘柄に分けて投資すること。1社の失敗で資産の大半を失う事態を防ぐ。
- ドルコスト平均法 毎月同じ金額を買い続ける方法。買う時期を分散し、高値で一度に買う失敗を防ぐ。
- ポジションサイズ 1回の取引にいくら投じるかの決め方。銘柄選びより結果を左右する。
- 最終更新
- 2026-09-16