フィボナッチ・リトレースメント
上げ幅の何%まで押したかを区切る線。どの高値と安値を選ぶかで位置が変わる。
ひとことで言うと
上げた幅に対して、どこまで下げたかを決まった比率で区切った線です。
もう少しくわしく
上げた後の下げを押しといいます。「どこまで押したら買いか」を考えるときに使われます。
使う比率は決まっています。
| 比率 | 由来 |
|---|---|
| 23.6% | 0.618を3回かけた数 |
| 38.2% | 0.618を2回かけた数 |
| 50% | フィボナッチではない(慣習で足されている) |
| 61.8% | 黄金比から出る数 |
| 78.6% | 0.618の平方根 |
0.618という数が中心にあります。これは黄金比から出る数で、自然界の形にも現れるとされています。
なぜ株価にこの比率が当てはまるのか。理屈はありません。
ただし、多くの人が同じ線を見ているという事実はあります。同じ水準で買い注文を出す人が多ければ、そこで実際に止まることはあります。これを自己成就といいます。
比率に力があるのではなく、見ている人の数に力があります。
実際の数字で見る
安値1,000円から高値2,000円まで上げた株の、押し目の水準を計算します。
上げ幅は1,000円です。これに比率を掛けて、天井から引きます。
| 比率 | 計算 | 水準 |
|---|---|---|
| 23.6% | 2,000 − 236 | 1,764円 |
| 38.2% | 2,000 − 382 | 1,618円 |
| 50% | 2,000 − 500 | 1,500円 |
| 61.8% | 2,000 − 618 | 1,382円 |
よく語られるのは、38.2%と61.8%です。
| 押した深さ | 言われていること |
|---|---|
| 38.2%まで | 上げの勢いが強い |
| 50%前後 | 標準的な押し |
| 61.8%より深い | 上げが終わった可能性 |
61.8%を超えて押すと、上げた分の6割以上を失ったことになります。そこまで戻れば、上げの前提が崩れているという見方です。
ここに注意
どの高値と安値を選ぶかで、線の位置はいくらでも変わります。
これがこの手法の最大の問題です。
同じチャートでも、次のように選べます。
| 選び方 | 結果 |
|---|---|
| 直近の安値から高値まで | ある水準が出る |
| 半年前の安値から | まったく違う水準が出る |
| 日足で引くか週足で引くか | また違う水準 |
都合のよい2点を選べば、いま止まっている水準にぴったり合う線を必ず引けます。
チャートに線を引いて「38.2%で反発した」と説明するのは簡単です。しかしその線を、反発する前に引いていたかが問われます。
後から引いた線は、何の証明にもなりません。
もう3つ、注意点があります。
1. 50%はフィボナッチ数列と関係ありません。
「半値押し」という昔からの言葉があり、それが混ざったものです。名前に反して、この線だけは由来が違います。
2. 線が多すぎます。
23.6%・38.2%・50%・61.8%・78.6%。5本も引けば、どこかには当たります。
「フィボナッチが効いた」という説明が多く見られるのは、当たる場所をたくさん用意しているからでもあります。
3. 会社の中身とは無関係です。
この比率は、株価の動きだけから引いています。 その会社の業績も、財務も、まったく使っていません。
業績が悪化して下げている株は、38.2%でも61.8%でも止まりません。下げる理由があるかぎり、下げ続けます。
そのうえで、使いどころを書いておきます。
「どこまで下げたら、上げの前提が崩れるか」をあらかじめ決める道具としては使えます。
「61.8%より深く押したら、この上げは終わったとみて手を引く」と先に決めておくなら、意味があります。
線を引いて買う理由を探すのではなく、やめる水準を決めるために使う。 それがこの手法の、数少ない正しい使い方です。
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- 最終更新
- 2026-09-17